本編
先月から家族の人数が合わない。
僕の家族は、父親、母親、兄、僕、妹の5人家族だ。
当たり前だけど、記憶違いなんかじゃない。
僕の家族は仲が良くて、家を出て行ったとかもない。
僕と妹はまだ学生だし、兄も家から仕事に行っている。
兄はそろそろ一人暮らししたいなんてことを言ってるけど、出ていく気配は全くない。
母さんはもちろん、僕も妹も兄が家にいてくれるのは嬉しい。
父さんも、男なら独り立ちしろ、なんて言ってるけど、心の底では出て行って欲しくないはずだ。
とにかく、僕の家族は仲がいい。
誰かを無視するなんて考えられないし、考えたくもない。
でも、そんな僕の家族が先月からおかしい。
まず、最初の異変はご飯が4人分しか用意されてないことだった。
いくら家族の仲がいいと言っても、ご飯を食べるタイミングはバラバラだ。
父さんや兄さんの生活が仕事の関係で、僕たちと大きく違うから、何となく昔からご飯は個々で食べていた。
母さんが用意してくれたご飯をみんなが別々のタイミングで食べる。
それなのに、母さんが4人分しか用意してくれていない。
父さんもそうだ。
いつもお土産は人数分買ってきてくれるのに、4人分しか買ってきてくれなかった。
それなのに、誰も文句を言わない。
それに、何だか家の中が妙に静まり返っている気がする。
会話が少ないというか、ほとんどない。
なんでこうなったんだろう。
僕が先月、親に黙って友達と一緒に出掛けたからか?
いや、でも、今までだって、そういうことは何度もあった。
あれ? そういえば、いつも怒られるはずなのに、そのときは怒られなかった。
これって、やっぱり怒ってるってこと?
あとで、ちゃんと謝っておこう。
そして、今日は珍しく、晩御飯は外食することになった。
家族全員でお店に行く。
すると店員はお水を4つしか持ってきてくれなかった。
やっぱり、家族の人数が合ってない。
でも、僕の目の前には全員いる。
なんでだろう?
終わり。
■解説
語り部は先月、友だちと出かけた際に、おそらく事故で亡くなっている。
語り部が幽霊になってしまったため、家族やお店の店員は4つ分しか用意しなかったのである。

