本編
私は今まで、一度もギャンブルに負けたことがない。
なので、伝説のギャンブラーなんて呼ばれている。
勝てるのは当然のことで、実は私は超能力者なのだ。
念動力と透視能力。
この2つの力があれば、どんなギャンブルでも勝利を収めるのは当然だ。
他のギャンブラーからは羨望の目で見られ、崇められ、弟子入りも幾度もなくお願いされた。
ただ、超能力なんて人に教えられるわけでもないし、超能力以外は特に技術を持っていないから、教えるものがない。
だから、いつも弟子入りは断っている。
そういうところが、さらに私の神秘性が高まるのか、孤高のギャンブラーとも称えられているようだ。
ギャンブラーからは尊敬される私だが、ディーラーから見れば厄介な存在になる。
それは当然だろう。
どんなことをしても、勝たれてしまうからだ。
例え、相手がイカサマをしていても、見破れるし、逆にそれを利用できる。
というより、私の方がいつもイカサマをしているようなものだ。
そのせいで、どこでもギャンブルができなくなってしまった。
表でも、裏でも。
伝説のギャンブラーなのに、ギャンブルができないなんて、皮肉な話だ。
だが、それは他人からしたら笑い話かもしれないが、私からしたら死活問題になる。
ギャンブルができなければ、お金を儲けられない。
それは生活ができなくなると同意だ。
どうしようか迷っていたときだった。
不意にある人物からギャンブルに誘われた。
それは裏の世界で知らない人間がいないほどの大富豪である。
その人物は私を負かしたいというわけではなく、どちらかというと単に目の前で私のギャンブルを見たいという感じだった。
だから、例え、裏社会で絶大な権力を持つ人物でも、勝ったからといって殺されるというわけでもない。
これはチャンスだと思った。
ここで一生分の金を稼ぐ。
そうすれば、もうギャンブルをする必要もない。
とはいえ、何度も何度も勝ち続ければ、さすがに相手の機嫌が悪くなる。
だから一回で一気に勝つしかない。
大富豪は私に勝負の内容を決めさせてくれた。
私は部屋の中で目についた『黒ひげ危機一発』で勝負することを提案する。
これなら技術もいらないし、運勝負に見える。
相手がイカサマと疑ることもない。
大富豪はその勝負に了承してくれる。
そして、勝負を始める前に私はもう一つ提案した。
「この勝負に全てを賭けさせてほしい」
「全て、とは?」
「私が勝ったら100億ください」
「負けたら?」
「命を捧げます」
その提案に大富豪は満足してOKを出した。
もちろん、私は超能力で、どこを刺せば黒ひげが飛び出すかわかっている。
そこをひたすら避ければいいだけだ。
交互に剣を刺していく。
なかなか、黒ひげは出ない。
勝負が長引いていく。
いくら勝てるとわかっていても、この状況は心臓に悪い。
そう考えてたときだった。
ようやく、大富豪が刺した剣で黒ひげが飛び出した。
やった。
これで私は一生、金に困ることはなくなったわけだ。
終わり。
■解説
黒ひげ危機一発は2025年の50周年を機に『黒ひげを飛ばした人が勝者』となった。
つまり、語り部は『負け』たことになる。
語り部は皮肉にも思った通り、死んでしまうので、一生金に困ることはなくなった。

