夜、道を歩きながら街灯を見ると、ふと思い出す。
それは怖いというよりも、不気味な話だ。
あれは5年前のことだ。
当時は住宅街にあるマンションに住んでいた。
その場所は都市開発だか、町興しとかで、とにかく綺麗な街並みにしようとしていたって聞いた。
だから、街路樹とかがあったり、道に装飾品があったり、とにかく綺麗で華やかな都会の雰囲気を感じるところだった。
街灯とかもたくさんあって、真夜中でも暗くて怖いなんてことはなかったし、実際、治安もよかったと思う。
俺が住んでいたマンションも、その計画の一部だったのか、とにかく『明るくて綺麗』という感じだった。
マンションの入り口や、各階にはもちろん、それぞれの部屋のドアの上に外灯が設置されていた。
正直、俺はやりすぎだと思ったし、なんならちょっと眩しかったくらいだ。
当然、新築だったから家賃は結構、高かった。
でも、それなりの収入があったし、一人暮らしで寂しいというのもあったし、何より帰るのが深夜になることが多いから、こういう場所の方が落ち着けてよかったのだ。
前や今、住んでる場所なんかは終電で帰る頃には周りは真っ暗で、慣れているとはいえ不気味さを感じられずにはいられなかった。
その点、そのマンションはいつも明るかったから、俺みたいな人間にとってはいい場所だったんだ。
そのマンションに住んで、1年くらいした頃だったと思う。
その日も、終電にギリギリで乗って、家に着く頃には深夜の1時くらいになっていた。
その日は金曜で、疲れ果てていた俺は、明日は1日寝て過ごそうと考えながら、家のドアの鍵を開けようとしたんだ。
そして、ふと気づいた。
隣のドアの上に付いている外灯が消えてることに。
そのときは単に電球が切れたんだろうと大して気にしてなかったんだ。
でも、その次の日。
仕事が休みで寝ていると、なんか外がガヤガヤと騒がしい。
なんだろうと思って出てみたら、救急車やら警察やら、やじ馬が集まっていた。
近くにいた人に何があったのか聞いてみたら、隣の人が死体で見つかったらしい。
死因は心臓麻痺って話だったけど、その人の話だから本当かどうかはわからない。
ただ、隣の人が亡くなったというのは本当だ。
そして、その隣というのは、前の日に外灯が消えていた部屋の人だ。
変な偶然って怖いなと思っていたんだけど、その3ヶ月後くらいした頃だった。
その日も仕事で帰りが遅くて、夜道を一人で歩いていた。
するといきなり、ふっと暗くなった。
なんだ? と思って顔を上げると街灯が消えていた。
そのときも、別に気にはしなかった。
街灯が電球が切れるなんて、そう珍しいことじゃないし。
でも、その後、ある一家が自殺したって話を聞いた。
その一家というのが、あの日、俺が通りかかって、街灯が切れたところの場所にあった家だった。
物凄い確率だと思うけど、さすがに偶然だろうと思った。
思い込もうとした。
だけど、それから半年のうちに同じようなことが3回続いた。
病死、事故死、老衰。
町で死人が出るのは当たり前のことだ。
毎日、どこかで誰かが死んでいる。
だけど、死ぬ前に、その家の前の街灯が切れるという偶然何て、そう何度も続くことがあるんだろうか。
それでも俺は、不気味だなと思うだけで、別に引っ越そうなんて思ってもみなかった。
そのくらい、この街が気に入っていたから。
ただ、それは自分に関係ない話であることが前提だ。
あるとき、俺は絶望することになる。
なぜなら、自分の部屋の前にある外灯が消えていたからだ。
そのとき俺は、相当パニックになった。
今までのことは偶然だったと自分に言い聞かせたけど、万が一の可能性もある。
そこで俺は二つ隣の部屋の外灯の電球と、自分の部屋の電球を取り換えた。
その日の夜は恐怖と罪悪感で寝られなかった。
次の日。
俺は会社を休んで、すぐに部屋を決めて、その日のうちに引っ越した。
それからもう5年が経った。
俺は今も、こうして無事に生きている。
でも、あの、二つ隣の部屋の人がどうなったかは、怖くて調べる気が起きない。
でもきっと、大丈夫だろう。
あれは単なる偶然であることに違いないのだから。

