本編
最近、隣の部屋に可愛い女の子が引っ越してきた。
ラッキーと思って、何とか話しかけるきっかけを探しているが、なかなか見つからない。
その子と俺の生活が違い過ぎて、なかなか会うことがない。
話をしたのなんて、引っ越しの挨拶をしてきたときが最後だ。
だからといって、外で待ち伏せなんてできないし、どうしようかな、なんて考えていた。
でも、最近は逆に仲良くならない方がいいかな、と思うようになってきた。
というのも、彼女には変わった趣味があるようだからだ。
それは深夜2時くらいになると、ホラー動画を見始める。
内容まではちゃんと聞き取れないが、怨念のこもったような女の声がぼそぼそと聞こえてくる。
うちは壁が薄いわけじゃないから、うっすらと声が聞こえるということは、結構な音量で聞いていることになる。
いくらホラー好きとは言っても、毎晩、大音量でそんな動画を見るなんて、ちょっとついていけない。
俺はホラーが苦手なくらいだからだ。
そんなある日。
家を出て、鍵を閉めようとしているときに彼女が部屋から出てきて話しかけてきた。
なんだろうと思っていたら、彼女は怪訝な顔をしながらこう言った。
「テレビの音量を少し下げてもらえませんか? 夜なのに迷惑です」
いや、それは……俺の台詞だよ。
終わり。
■解説
隣から聞こえてくる、女のぼそぼそ声は隣の住人のものではない。
一体、誰の声なのだろうか?

