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水切り

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本編

会社の残業で終電を乗り過ごしてしまった。
家までは5駅程度なのでタクシーを使うのも、なんだか勿体ない。
明日は休みだから歩いて帰ることにする。

考えてみれば会社から家まで歩いて帰るなんて初めてかもしれない。
深夜だから暗いのと、人がいないというのも趣があっていい。
歩いて帰ることにしたのは正解だった。

歩いていると堤防を見つけた。
階段があったので登ってみると、川を見つける。
大きな川だけど、流れが緩やかでほとんど流れがない。

それを見ていると、なんとなく石を拾い上げて水切りをしてみる。

3段まで跳ねた。

子供の頃は6段とか超えてたんだけどな。
なんて思うと少し悔しくなった。
だから何回か練習する。

すると6段まで跳ねた。
なんだか凄く嬉しい。

もう帰ろうかなと思ったら、後ろから声をかけられた。

「おじさん、水切り上手いね」

それは小学生くらいの子供だった。

「僕、ヘタッピで全然ダメなんだ」

そう言って子供は石を拾って投げる。
だが、水面に波紋すら起きず、石は沈んでしまった。

「ね? ダメでしょ?」

凄く寂しそうな顔をしている。
だから俺は少しコツを教えてあげることにした。

「いいか。石はこういう平べったいのを使うんだよ。で、こうやって斜めに投げる」

俺の投げた石は4段まで跳ねて沈んだ。

「えっと、こう?」

子供も真似して投げるが、一回も跳ねずに沈む。
何回か、投げてみせて、教えてあげたが、子供は結局1回も跳ねることもなかった。

「やっぱり、ダメだな僕は」

そう言って子供は帰って行ってしまった。

俺が子供の頃にも、ああいう不器用な子はいた。
何回やっても失敗する子が。

けど、水切りができないからといって、別に生活に支障はない。
あの不器用だった子も、今ではタレントとして活躍している。

水切りなんて懐かしいことができたことに満足し、俺は再び歩き始めた。

終わり。

■解説

水切りで1回も跳ねなかったとしても、必ず水面に波紋が起きるはずである。
しかし、子供が投げた石は波紋が起きていない。
さらに語り部が子供に会ったのは深夜である。
そんな時間に川にいるのも不自然である。
もしかすると子供は幽霊だったのかもしれない。

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