本編
定年を迎えて仕事に行かなくなったので、毎日が暇だ。
少しでもパートなどで働こうかと思ったりもするが、年のせいか思うように体が上手く動かなくなってきた。
何か面白いものでもないかと思ってパソコンを眺めていたら、豪華客船で世界一周旅行という記事を見つけた。
船の旅はしたことないから前々から興味があった。
申し込んでみようかと思ったが、費用がバカみたいに高い。
諦めようと思っていたら、下の方に小さく格安プランというのがあった。
こういう怪しいのは、どうせ食事が付いてないとか部屋が物凄く小さいんだろうと思って詳細を見てみる。
すると、ちゃんと3食付きで部屋も大きい。
これで正規の料金の10分の1でいいなんて破格だろう。
これは行くしかないと思い、申し込んだ。
当日、心を躍らせながら集合場所に行く。
周りはセレブっぽい人ばかりで、自分が浮いている気がするが、気にしなければどうってことない。
そしてついに乗る船がやってきた。
豪華客船というだけあって、とても立派だった。
こんな船で世界一周なんて贅沢だ。
人生最後の思い出としては満足できる。
スタッフに促されて船内に入る。
するとスタッフからパンフレットを渡された。
どうやら今回の旅のスケジュールのようだった。
そのスケジュールには早朝から深夜までびっしりと催し物が書かれている。
さすがにこれに参加はできないだろうと思い、スタッフに聞いてみた。
すると驚いた顔をしていた。
どうやら参加できるらしい。
驚いたのはこっちの方だ。
これは楽しい旅になりそうだ。
今からワクワクする。
終わり。
■解説
語り部は客としてではなく、従業員として催し物に参加することになる。
つまり、お金を払って、働くことになるわけである。
部屋が大きいのは、大部屋であり、3食付くといっても残り物の可能性が高い。
しかも、早朝から深夜までびっしりとスケジュールが埋まっているということは、それだけ長い時間を働かされることになる。