本編
寝坊した。
会社に遅刻しちゃう。
それでなくても、朝は慌ただしいのに、寝坊のせいでいつも以上に慌ててしまう。
仕方ないから朝食は諦めよう。
とにかく、ささっとメイクをして、着替えて外に出る。
なんだかいつもより暗い。
空を見上げると、なんだか曇っていて、雨が降りそうだ。
傘を持って行こうか悩む。
正直、手荷物は避けたいところだけど、雨に降られてまた傘を買うのは嫌だ。
もう家に10本以上、傘があるからこれ以上増えるのは避けたい。
サッと天気予報を見よう。
そう思ってスマホを出したら、メールが来ていた。
「え?」
送信者は私だ。
もちろん、私は自分になんかメールしていない。
タイトルには『絶対に開いて』と書いてある。
何だか怪しいけど、とにかく開いてみることにした。
すると本文には『傘を持って行って』と書かれている。
なんだろう、これ?
調べたいところだけど、今はとにかく時間がない。
私は玄関にある傘を1本手に取って家を出た。
そして、足早に駅に向かう。
すると途中でぽつぽつと雨が降り始めた。
私は、持ってきてよかったと思い、すぐに持っていた傘を差す。
おかげで私は濡れずに、無事に駅まで着くことができた。
電車の中で改めてさっきのメールを見てみる。
するとさっきは気付かなかったけど、受信した時間が『今』になっていた。
私は馬鹿馬鹿しいと思いながらも、自分宛てに『傘を持って行って』と打ち、タイトルを『絶対に開いて』にして送信した。
不思議なことに、その日から『未来の私』からメールが届くようになった。
注意した方がいいことが送られてきて、必ず、そのことが起こる。
もちろん、私は未来の私と同じように、過去の私への助言のメールを送る。
これで、危機を回避しているのだ。
このメールは本当に助かる。
最初は自分からメールが来るなんて不気味と思っていたけど、今ではなくてはならない存在になった。
おかげで日々、順風満帆に過ごせている。
あるとき、残業で遅くなってしまい、家へと急いでいた。
公園を通れば近道だけど、薄暗くて怖い。
どうしようか迷ったけど、私は明日も早いし、すぐに帰りたかったこともあり、公園を通って帰ることにした。
でも、その選択は間違っていた。
いきなり、目の前にナイフを持った男が現れた。
私は咄嗟に通り魔だとわかった。
すぐに私に知らせなくっちゃ。
私はメールを送るために、スマホを取り出した。
終わり。
■解説
未来から来るメールは、必ず起こることである。
だが、公園は危険だというメールは『来ていない』。
つまり、語り部は『過去の自分へメールを送れなかった』ことになる。
この後、語り部はメールを送る前に殺されてしまうのである。

