本編
転職の際に、1ヶ月間空くということもあり、俺は思い切って長期の海外旅行をすることにした。
前の会社はブラック寄りで、休みがほとんどなく、お金を使う暇がほとんどなかった。
だから、結構、貯金が貯まっていて、それでゆっくり一人旅行をしようと思ったわけだ。
場所は前々から行ってみたいと思っていたヨーロッパ。
3週間くらいをかけて、5ヵ国くらい回るつもりだ。
せっかくの旅行なので、あまりスケジュールを決めずに自由な感じで回ろうと思っていた。
最初は初の海外ということで、物珍しさと慣れない環境で慌ただしかったが、一週間もすれば慣れてくる。
そうすると、なんだか、一人だと物寂しくなってきた。
観光する場所も前の日に、ホテルの中で調べると言うほどの無計画な旅行。
次第に、調べるのも面倒くさくなり、町中をぶらぶらと歩くだけになる始末だ。
こんなことならツアーにでも参加するべきだったかなと後悔するが、さすがにもう遅いだろう。
そんなとき、ふと、大学の頃からの友達からメールが来る。
久しぶりに会って、飲まないかという誘いだった。
思えば、お互い、大学を卒業してから仕事で忙しく、ほとんど会えていなかった。
そう考えると本当に懐かしい。
会って、積もる話もしたいと思った。
しかも、友達は長い間溜めてた、有休を消化中とのことで、暇らしい。
そこで俺はその友達に、今、海外に旅行中だから、お前も来ないか、と誘ってみた。
すると、友達から割と興味津々の反応が返ってくる。
俺は止めとばかりに、今回の旅行で撮った自撮り写真をガンガン送った。
すると、友達からこう返信があった。
『邪魔しちゃ悪いから、やめておくよ』
終わり。
■解説
語り部の友達は最初、興味津々だった。
ということは旅行自体は前向きだったはずである。
そして、友達は語り部の自撮り写真を見て、『邪魔だから』と返してきている。
さらに『語り部の方から誘っている』のに、邪魔というのはおかしな表現である。
邪魔、というのは語り部一人に対ししてではなく、『2人の邪魔をしたら悪い』という意味ではないかと考えられる。
つまり、語り部が送った写真には『共通して、同じ人』が映っていたのではないだろうか。