サイトアイコン 意味が分かると怖い話【解説付き】

伝説の始まり

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本編

もともと、素質はあったと思いますよ。
いつも推理小説とか読んでましたし。

え? 小説と実際の事件は違う?

まあ、そうかもしれないですけど。
でも、なんていうか、頭の回転は早いと思います。
学校でも、色々問題を解決とかしてましたしね。

先生も結構、頼ってたと思います。

あと、あいつはなんていうか、度胸があるんですよね。

これはあいつの最初の事件のときのことなんですけど。

俺たち、夏休みを利用して、山奥のリゾートホテルに泊まりに行ったんですよ。
リゾートホテルって言っても、客は20人もいなかったんですけどね。

その日は酷い嵐で、俺たちは一歩もホテルから出られない状態になったんですよ。

そのときは、せっかく来たのに勿体ないなんて呑気なことを言ってたんですけどね。
明日は晴れればいいな、なんて言ってたら、いきなり悲鳴が聞こえたんですよ。

で、声が聞こえたところに行ったら、その、あったんです。
死体が。

しかも、首を刎ねられて頭がなかったんですよ。
首無し死体ってわけです。

だから男性だってことしかわからなかったんですけど、あいつは死体の服をめくって、背中を見たんです。
そしたら、火傷の痕があって、それでその死体が誰かってわかったんですよ。

あれにはびっくりしました。
だって、客なんて、その日にあったばかりの人たちですよ。
俺なんて、名前を聞いても、誰? って感じでした。

ホテルの人たちも、客たちも警察を呼ぼうって話になったんですけど、外は嵐ですからね。
すぐには来られないって言うんです。
仕方ないですけど。

だから、怖いけど、そのままにしておくしかないってなったんです。
でも、あいつは死体を色々と調べて、死亡推定時刻っていうんですか?
それを特定して、客たちの話を聞いて、そして、見つけたんです。

犯人を。

もちろん、犯人は必死に否定してましたよ。
でも、あいつは言い逃れができないくらいの証拠を突きつけたんです。

誰の目から見ても、その人以外の犯人は考えられないってなったんですよ。

客たちと従業員で協力して、その人を捕まえて、後日、警察に引き渡したんです。

そのことは結構話題になりました。
だって、あいつは高校生でしたから。

まるで漫画みたいだって、凄い盛り上がってましたよ。

その事件からですね。
あいつの元に色々と事件解決の依頼が来るようになったのは。

そんなあいつが今や、知らない人の方が少ないってくらいの名探偵になったんですからね。
考え深いですよ。

久しぶりにあいつに会ってみたいな。

終わり。

■解説

名探偵になったあいつは、いくら普段から推理小説や学校の事件を解決しているとは言っても、おかしい点がある。
それは死体に慣れ過ぎているというところだ。
そして、背中の火傷痕で被害者を特定したが、いつ、背中を見たのだろうか。
客はその日にあったばかりの人だと語り部は言っている。
さらに犯人を追い詰める証拠を突きつけたが、犯人と言われる人は自白していないし、否定している。
もしかすると、犯人はあいつだったのかもしれない。
つまり、あいつは有名になるため殺人を犯し、誰かにその罪を擦り付けた可能性がある。

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