本編
青いバラは自然界に存在しないらしい。
それはバラの花びらには青色の色素がないからだという。
だから、青いバラはバラの交配で作る必要があるみたいだ。
でも、Tが交配じゃなく、自然の青いバラを見つけたと言ってきた。
もし本当だとしたら、凄いことだ。
大発見になるんじゃないだろうか。
見てみたいと言ったら、Tは自慢げに、土下座して頼むなら見せてやると返してきた。
Tの家は金持ちで、それを鼻にかける、本当に嫌なやつだ。
とはいえ、土下座するくらいで見られるなら安いものだ。
俺はTに土下座して頼むと、明日、家に来ればみせてやると約束してくれた。
次の日。
俺は約束通りにTの家に行った。
そしたら、Tは青い顔をして、見せられなくなったから帰ってくれと言ってきた。
冗談じゃない。
こっちは土下座もしたんだぞ。
とにかく見せるだけ見せろと言ってやった。
見せないなら、今度はお前が土下座しろと言ったら、Tは渋々庭に案内してくれる。
歩く途中、いつものお手伝いさんの姿が見えないことをTに聞いた。
お手伝いさんは可愛くて、実はそのお手伝いさんに会えるのも楽しみにしていたからだ。
するとTはバラのことで喧嘩して、実家に帰ってしまったらしい。
残念だと思っていると、庭に着いた。
庭には一面に赤いバラが咲いている。
その中で青色のバラを探す。
でも、全然見つからない。
おかしいなと思っていると、変なところを見つけた。
地面に赤いペンキがぶちまけられている。
俺はまさかと思い、Tに詰め寄る。
Tは観念して認めた。
本当は青いバラなんてなくて、ペンキで塗っただけだったそうだ。
騙してごめんと言って、Tはその場で土下座した。
Tがこんなに素直になるなんて珍しい。
だから、俺はTを許すことにした。
終わり。
■解説
青いバラに見せかけるなら、青いペンキではないとおかしい。
だが、地面に撒かれていたのは赤いペンキである。
そして、いつもいるお手伝いはバラのことで喧嘩して実家に帰ったと言っている。
もしかすると、Tが言っているのは逆で、青いバラに赤いペンキを塗ったのかもしれない。
では、なぜ、そんなことをしたのか。
それはお手伝いの血を隠すために、赤いペンキで塗った可能性がある。