本編
最近、ダークウェブにハマっている。
ここは本当に凄い。
公の場では絶対に手に入らないようなものも普通に売っている。
俺も何度か購入した。
手に入れた時の高揚感は、なんとも言えないほどで癖になる。
確かに高額ではあるが、本来ならどんなに金を積んでも買えないものなのだ。
それを金さえ出せば手に入るのなら、金に糸目をつけなくなるのも当然だろう。
幸い、俺の親はかなりの資産家なので、金なんて腐るほどある。
とはいえ、買い物も飽きてきた。
何かもっと俺を高揚させるようなものはないかと、ダークウェブ内を徘徊する。
すると、体験型の商品を発見した。
それは「ある体験ができる」というものだ。
それは表でやれば、確実に捕まるような犯罪行為も入っている。
それを購入すれば、運営側が手はずを整えてくれ、俺はただ実行するだけだ。
もちろん、それで俺が捕まるようなことはない。
きっと、運営側で何とかやっているのだろう。
この体験型の商品は、俺をかなり興奮させた。
俺は様々な犯罪の体験型の商品を購入した。
ただ、意外と人を殺すという体験の商品がない。
なぜだろう。
不思議だ。
こんなのは、どこかの国で人を攫ってくればいいだけなのに。
早く、その体験がしたい。
もし、売りに出されていれば、確実に買ってみせるのに。
俺は数週間、ずっとダークウェブに張り付いた。
すると、ようやくその商品が売りに出された。
俺は速攻で買った。
そして体験の当日。
俺は指定された場所へ行く。
それは誰も来ないような山奥だった。
そこで俺は係の人間から銃器を受け取り、説明を受ける。
ルールは簡単。
山の中で見つけた人間を持っている武器で襲っていいというものだ。
係の人間の話っぷりでは、どうやら何人も山の中にいるようだ。
面白い。
せいぜい1人か2人くらいだと思っていたけど、もっとたくさんの人間を狩れそうだ。
俺はワクワクしながら山の中を散策する。
すると、人影を見つけた。
俺はそいつの前に躍り出て、銃を構える。
相手は泣き叫ぶと思ったが、物凄く驚いた顔をしていた。
正直に言って、俺も驚いた。
だって、相手の手には銃が握られている。
一体、どういうことだ?
終わり。
■解説
相手も銃を持っていると言うことは、おそらく相手も語り部と同じ商品を買ったのだと考えられる。
それは、相手を殺すことができるが、殺される可能性もあると言うことになる。
つまり、語り部たちはバトルロワイアルの場に入れられ、殺し合いをさせられることになっている。