本編
その少年は昆虫採集が趣味だった。
休みの日になれば、虫取り網とカゴを持って、山へと出かけている。
しかし、最近は親から危険だからと言われて、山に行くことはもちろん、一人で遊びに出かけることもできなくなった。
最初は図鑑を見て気を紛らわせていたが、次第に不満が溜まっていく。
そんなある日。
クラスのお金持ちの子が、少年に話しかけてきた。
なんでも、家には珍しい標本があるから見に来ないかということらしい。
少年はきっと見たことのないような虫が見れるだろうと思い、すぐに行くと返事した。
ただ、その子は、とても珍しい標本で、あまり人にはバレたくないから、誰にも言わず、一人で来てほしいとのことだった。
少年はもちろん一人で行くと言い、一度家に帰った。
そして、自分で集めた虫の標本も持って行くことにした。
もしかしたら、その子が知らない虫もいるかもしれないからだ。
なにより少年は自分と同じ趣味を持つ子がいたことに感激し、胸を躍らせながら、その子の家に向かった。
その子の家に着くと、その子は待ってたよと嬉しそうに言って、家に入れてくれた。
さっそく、その子は標本が置いてある部屋に案内すると言って歩き出す。
少年は自分も標本を持ってきたと言って、その子に見せるが、そこ子は顔をしかめてしまう。
その子は虫が大嫌いだから、その標本はしまってほしいと言われてしまう。
がっかりとして標本をしまう少年。
そして、標本がある部屋に着いた。
すると、そこには少年と同じくらいの大きさの箱が置いてあるだけだった。
少年は、標本の中身はどこ、と聞いた。
するとその子は「あるよ」と言った。
終わり。
■解説
標本の中身は少年。
つまり、その子は人間の標本を作っていた。
少年を標本にするために家に呼んだのである。
そして、その子は他の子も浚って標本にしていたため、行方不明者が出ていた。
そのため少年の親は「危ない」と言って山に行くことを禁じていたのである。