本編
瓶に手紙を入れて海に流すのをボトルメッセージっていうらしい。
お母さんが子供の頃に流行ったみたい。
今はメールとかあるから、わざわざそんなことをしなくてもいいけど、知らない人にメッセージが届くのはなんだか面白い。
だから、僕もやってみようと思って、瓶に手紙を入れて海に流してみた。
返事が来るだろうか。
ドキドキしながら何日か待ってると、浜辺に僕が流した瓶が落ちていた。
戻ってきちゃったのかと思っていたら、瓶の中に僕の手紙の返事が入っていた。
よかった。
ちゃんと誰かに届いたんだ。
僕は嬉しくなって、また手紙を書いて瓶に入れて流した。
また何日かすぎて、瓶が戻ってきた。
ちゃんと返事の手紙が入っている。
僕はそれから何回もお手紙を出した。
お返事をくれる人は島に住んでいて、年は25歳らしい。
大人と手紙を交換するのは、僕も大人になったみたいでなんか嬉しい。
お手紙をやり取りする中で、僕たちは仲良くなった。
お父さんやお母さんにも相談できないことも、その人になら相談していた。
その人のアドバイスは本当にためになる。
そんなとき、その人から悩みを聞いてほしいときた。
なんでも、好きな人がいて、その人が友達に取られそうらしい。
どうしたらいいかって聞かれた。
だから僕はそんな人は友達じゃない、やっつけちゃいなよと返事をした。
そしたら、その人から、ありがとう、決心がついたと返って来た。
役に立ったようでなんか嬉しい。
そして、今日もその人に手紙を流そうとしたら、お母さんに気を付けるように注意しなさいって言われた。
なんでも、近所で殺人事件があったらしい。
殺人事件なんて、どこかドキドキする。
そうだ。
手紙にもこのことを書いておこう。
終わり。
■解説
普通はメッセージに住所を書き、普通の郵便で手紙をやり取りするものである。
だが、語り部はいつもボトルメッセージやり取りをしている。
毎回、成功するのは確率的にもかなり低いはずである。
語り部がやりとりしている相手は島の人間ではなく、近くに住む人間である可能性が高い。
そして、語り部が「やっつけちゃいな」と書いた後に殺人事件が起こっている。
これは、相手が決心をして、恋敵を殺してしまったのかもしれない。
つまり、語り部は殺人犯と手紙のやり取りをしている可能性がある。