連絡
夏休みの朝の5時頃。
寝ていたら、友達から電話がきた。
なんでも車のタイヤがパンクしたから、スペアタイヤを持ってきてほしいとのことだ。
場所は峠らしい。
仕方なくタイヤを持って、友達が言っていた場所へ向かった。
すると数台のパトカーが停まっていた。
なんでも深夜に事故があり、車が崖下に転落してしまったのだという。
周りを見ても、友達の車がない。
もしかしてと思っていると、事故を起こしたのは友達の車だった。
原因はタイヤがパンクしたことでハンドル操作を誤ったかららしい。
もう少し早くついていれば、友達は死ななかったかもしれない。
終わり。
■解説
友達から電話がかかってきたのは朝の5時である。
しかし、事故を起こしたのは深夜だと蛍雪は言っている。
また、タイヤがパンクしたと電話しているのに、そのまま車を走らせるのはおかしい。
あの電話は一体、なんだったのだろうか。
確定した未来
100パーセント当たるという噂の占い師がいた。
今まで、占った未来が外れたことはないのだという。
そんな占い師に興味があり、男は占ってもらった。
すると占い師に、5年後に命を落とすと言われた。
たとえ、占った相手の未来がどんなに悲惨でも占い師はそのまま伝えて、諦めて運命に従えと言う。
しかし、男には、必ず運命を変えるから、5年間は遠くに行くように勧めた。
男は占い師の言われた通り、海外へと行った。
しかし、占いの恐怖は消えることはなかった。
5年が経った。
男は恐怖に耐えられなくなり、占い師を恨むようになった。
男は最後に占い師の命を奪うと決める。
帰国して占い師の元へ行く。
すると占い師は用意していた銃で男を撃った。
終わり。
■解説
占い師は自分を殺しにくる未来が見えていた。
気圧
うちのアパートの風呂場は換気扇がついていない。
だから、窓を開けるしかない。
風呂に入る時以外のときはいつも開けっ放しにしている。
そのせいで気圧の関係で風呂場のドアが勝手に開いたりするみたいだ。
住んでる部屋は事故物件だったから、最初は心霊現象かと思ったが、調べてみたら風呂場の窓のせいだった。
勝手にバタンバタンとドアが開くのが鬱陶しいと思って、お札とかたくさん張ってたけど意味がなかったんだな。
だから、ドアがうるさいときは窓を閉めることにした。
今日も、バタンバタンうるさい。
窓を閉めよう。
そう思っていたら、窓は閉まっていた。
終わり。
■解説
窓が閉まっているのに、勝手にドアが開くということは気圧は関係ないことになる。
勝手にドアが開くのは幽霊のせいかもしれない。
危険なお薬
儂も今年で84歳だ。
昔は病院にも行ったことがないほど健康だったが、3ヶ月前に心筋梗塞になった。
それからは、血栓を予防する薬を飲むことになってしまった。
そのせいで、大好きだった納豆も控えるように言われている。
毎朝、薬を飲むのも面倒だ。
さっさと飲んでしまおう。
飲み終わると、ばあさんが「それ、私の薬」と言って怒っていた。
ばあさんはばあさんで、糖尿病の薬を飲んでいる。
はあ。
夫婦そろって体はボロボロだ。
もう少し健康に気を付けておけばよかったなぁ。
終わり。
■解説
血栓を予防する薬にはワーファリンが入っている。
そして、ワーファリンは糖尿病の薬のアクトスという薬は飲み合わせると危険である。
過去には間違えて飲んで、死亡事故が起きたことがある。
白昼夢
最近、生きてるのがつらくなるくらいつまらない。
そのせいか、よく白昼夢を見る。
自分が殺されそうになるという想像だ。
相手が包丁やハンマーを持って追いかけてくる。
それを必死に逃げるというシチュエーションだ。
逃げている時点で、生きたくないという願望から外れている。
だから、きっと刺激を求めているんだと思う。
今日も襲われて、必死に逃げてきた。
今回は包丁が腕をかすって血が出た。
すごく興奮した。
生きている感じがする。
スリルと痛みは人生に必要なんだと思う。
終わり。
■解説
想像であるなら痛みは感じないはずである。
つまり、語り部は白昼夢を見ているのではなく、実際に襲われている。
クロスワードパズル
僕はクロスワードパズルが好きだ。
今日も古本屋に行ってきた。
お店の人からは買わない方がいいって言われたけど、面白そうだから買ってきた。
さっそく解いてみる。
えーと、それぞれのマスを埋めていくと……。
すこっぷ、いけにえ、こーそく、ろくが、こうてい、のうみそ。
これの先頭の文字を組み合わせて言葉を作るのか。
す、い、こ、ろ、こ、の
うーん。
なんだろ?
あ、わかった。
「ここの水路」だ。
終わり。
■解説
語り部は「こーそく」と書いているが、その場合は「こうそく」となるはずである。
つまり間違えている可能性が高い。
こーそくではなく、ろーそくだったとすると、す、い、ろ、ろ、こ、のになる。
これを組み合わせると「の、ろ、い、こ、ろ、す」になる。
砂時計
5歳の時にもらった砂時計を、今でも愛用している。
3分しか計れないけど、カップ麺が好きな俺にとってはこれでちょうどいい。
今日もカップ麺にお湯を入れて砂時計をひっくり返す。
1分くらいした頃に、姉ちゃんが帰ってきて、自分のも用意してと命令してきた。
面倒くさいが、姉ちゃんは怒ったら怖いので用意する。
姉ちゃんはぴったり3分じゃないと文句を言うから面倒だ。
俺はカップ麺を用意し、お湯を注いで砂時計をひっくり返す。
俺のカップ麺は3分より長めになるけど、柔らかいのも好きだから、まあいいか。
終わり。
■解説
砂時計はデジタルのタイマーのようにリセットができない。
語り部が1分ほど経過後に砂時計をひっくり返しているので、砂が全部落ちても1分しか経っていないことになる。
語り部はこだわりのある姉に怒られる可能性が高い。
司令官
俺たちの部隊は激戦区の最前線に投入された。
毎日、新しい兵士が投入され、同じくらいの人数の兵士が戦場に散っていく。
そんな中、新しくやってきた司令官から出された命令は特攻だった。
全員が爆弾を持って、敵の基地に突っ込むという作戦だ。
明日、その作戦が実行される。
だが、奇跡が起きた。
敵の兵士が爆弾を持って、俺たちの基地に突っ込んできたのだ。
俺たちは司令官に呼ばれて、全員が作戦室にいた。
そんな中、敵が入ってきて、司令官を吹き飛ばしたのだ。
なんと、死傷者は司令官のみだった。
司令官を失った俺たちは戦線から離脱した。
終わり。
■解説
部屋の中で爆弾が爆発したのに司令官以外はけが人さえも出ていないのはおかしい。
つまり、司令官は敵ではなく、味方によって殺され、口裏を合わされた可能性が高い。
隠し場所
友達とよく話題になるが、エロ本の隠し場所だ。
ベッドの下とか、タンスの中とか、クローゼットの中とか色々ある。
でも、みんな、結局、母親に見つかるらしい。
ちなみに俺は自信の隠し場所がある。
それは辞典のカバーの中に入れておくということだ。
よく母さんが勝手に俺の部屋を掃除するけど、辞典までは開いて見ないはず。
だから一度も見つかったのことはない。
でも、ある日、授業で辞典を使うことになった。
俺は慌てていて、咄嗟に本棚から辞典を取ってカバンに入れた。
授業中に、辞典をカバーから出そうとしたときに、中を入れ替えていることを思い出した。
ヤバい、と思ったけど、中は普通の辞典だった。
危ない。
命拾いしたよ。
終わり。
■解説
語り部は母親に隠していることを見破られ、元に戻されている。
コンセント
田中の家は金持ちで、何かと高い物を買って自慢してくる。
今日も、プラチナ製のシャーペンをオーダーメイドで作って貰ったらしい。
こういう自慢は腹が立つ。
そんなとき、コンセントにシャーペンの芯を入れると火花が散るということを思い出した。
だから、俺は田中にそれをやろうと言ってみた。
田中は感電を怖がって嫌がったので、意気地なしと笑ってやった。
そしたら田中はお前はできるのかと言ってきたから、できると言った。
そういうことは想定済みだ。
シャーペンはプラスチック製だから感電はしない。
俺は田中のシャーペンを借りてやることにした。
火花であいつのシャーペンが壊れれば一石二鳥だ。
終わり。
■解説
田中のシャープペンはプラチナ製だと言っている。
プラチナは電気を通すので、語り部は感電する可能性が高い。