本編
息子は去年、事故で右腕を失った。
それからは息子の腕時計の脱着は私がしている。
あるとき、息子が一人で買い物に行くと出て行った。
すぐ帰ると言っていたのに、もう4時間も経っている。
気になって探しに行ってみると、水たまりに太いリングのような物が落ちていた。
それは息子の腕時計だった。
もしかしたら、腕時計を落として探し回っているのかもしれない。
早く息子に教えてあげないと思っていたら、電話がかかってきた。
出てみると、それは病院からだった。
終わり。
■解説
語り部が見つけた腕時計は締めた状態ある。
その場合、手首にひっかかって腕時計は落ちないはずである。
つまり息子は手首が切れ、それにより時計を落としたということになる。