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首狩り武者の伝説

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本編

私が住む村には首狩り武者が出るという噂がある。
 
戦国時代の真冬の時期に、戦に負けた武者がこの村に隠れ住んでいたところを、村人に見つかって斬首されたというもので、その武者が死んだ後に村人たちを復讐するという話らしい。
その話では、武者は極寒の中、食べ物もなくて、見つかった時にはすでに瀕死の状態だったみたいだ。
 
まあ、どうせ、その噂自体が本当かどうかも怪しいんだけど。
 
とにかく、村では冬になると首狩り武者に首を切られないように、マフラーをするというのが習わしなのだ。
 
言ってしまえば、寒い中マフラーもしないような軽装だと風邪をひくという戒めなんだと思う。
少し、大げさで怖がらせすぎだとは思うけど。
 
ただ、その噂のおかげで、私も小さい頃は冬になるとマフラーをしていたおかげで風邪をひいたことはない。
それは周りの子供たちも一緒で、冬に風邪をひく子は少なかった覚えがある。
 
そう考えると、こういう噂も悪くないのかも。
 
そして、風邪をひかない以外にも、この噂にはある利点がある。
それはこの噂を理由に堂々と、マフラーをプレゼントできるということだ。
 
中学生くらいになると、雪が降り始めるころに好きな人にマフラーを贈るというのが一種のイベントみたくなっている。
 
私も中学生の時にそれをやってみたいと思っていたけど、好きな人がいなかったのでこのイベントには縁がなかった。
 
でも、今年は違う。
高校に入ってから、私はSくんという好きな人ができた。
だから、今年はSくんにマフラーを贈るために、マフラーを編み始めていた。
 
雪のように真っ白なマフラー。
Sくんの純粋な性格にぴったりだ。
 
そして、初雪が降った日。
私はSくんにマフラーを渡した。
 
Sくんは喜んでくれて、それから毎日、私が編んだマフラーをしてくれていた。
Sくんとはいい雰囲気でこのまま付き合えるんじゃないかって思ってた。
 
でも、それは甘い考えだった。
 
その日は学校で居残りをしたせいで、帰るのが遅くなってしまった。
日は完全に沈んでいて、外は薄暗い。
そんな中、私は家へと急いでいた。
 
帰る途中、私はSくんを見かけた。
嬉しくなって、声をかけようと思ったけど、私はすぐにその場から逃げるようにして立ち去った。
 
それはSくんが私のマフラーではなく、違うマフラーをしていたからだ。
赤いマフラー。
私が渡したのは真逆の色。
きっと、他の誰かからもらったものなんだと思う。
 
明日、学校で聞いてみよう。
 
そう思っていたのに、次の日、先生から驚く発表があった。
それはSくんが昨日、誰かに殺されたというものだった。
 
正直、私は心の中で、ざまあみろと思ってしまった。
 
終わり。

■解説

語り部の話ではSは純粋な性格をしている。
そして、他の人からマフラーをもらった日に殺されるというのもタイミングが良すぎる。
もしかすると、Sはマフラーをするのを忘れて首狩り武者に首を切られ、首回りが真っ赤になり、それが赤いマフラーに見えたのかもしれない。

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