本編
取り調べが終わって、そろそろ昼休憩に入ろうかと思っていた時だった。
あるデパートで強盗が発生したという通報を受ける。
すぐに現場に急行できる人間は俺しかいない。
しかたなく、現場へと向かった。
デパート内は既に客も従業員も非難した後で、閑散としている。
それでも、まだ犯人がいるかもしれない。
俺は慎重に店内を進んでいく。
すると、物陰から一人の男性が倒れ込んでくる。
右足の太ももにナイフが刺さっていた。
もしかすると、犯人に刺されたのかもしれない。
俺は駆け寄り、声をかける。
「大丈夫ですか?」
「はい。なんとか……」
「足は犯人に刺されたんですね?」
「後ろから急に襲って来たんです。僕はその衝撃で倒れてしまって……」
「そうですか……。で、犯人はどっちの方に行ったかわかりますか?」
「犯人は僕を刺して、そのままあちらの方へ逃げていきました」
そう言って、男性は後方の出口の辺りを指差す。
なるほど。
犯人はまだそれほど遠くには行っていないようだ。
「僕のことはいいですから、早く犯人を追ってください」
「そうはいきませんよ。すぐ、応援と救急車を呼びます」
俺はすぐに救急車を呼んだ後に、連絡のために無線を入れる。
「犯人の特徴はわかりますか?」
「えっと、172センチで、痩せ型。髪を赤く染めていて、サングラスをしていました」
「ありがとうございます」
俺は無線で、男性から聞いたことを伝えた。
次の瞬間。
背中に衝撃と激痛が走り、俺の意識は途絶えた。
終わり。
■解説
男性は後ろから刺されて倒れ、犯人は後方へ逃げたはずなのになぜ、犯人の体格やサングラスをしていたことまでわかったのか。
また、男が倒れて、犯人がすぐに逃げたのであれば語り部も目撃しているはずである。
つまり、男が犯人で、語り部は嘘の証言を無線で連絡した後に後ろから刺されてしまった。
動画
簡易的な読み上げの動画になります。
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