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意味が分かると怖い話 解説付き Part591~600

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コピーガード

これは30年ほど前の、俺が学生だった頃の話だ。

クラスにKという、ものすごい金持ちがいた。
おじいさんが一代で小さな町工場を財閥にまで育て上げたらしい。
 
今はKの父親が社長の座を継いでいると言っていた。
おじいさんは孫であるKに甘く、欲しい物がなんでも買ってもらえたらしい。
ゲーム機なんかも、発売日どころか、発売日前に入手していたと自慢げに話していた。
 
小さい頃からそんな生活だったからか、Kは我がままでどうしようもない性格だ。
だから、周りはあまりKとは関わらないようにしていたというのも、わかる気がする。
 
周りにいるのは俺のようにKのおこぼれを貰おうというやつばかりだ。
いわゆる取り巻きってやつだ。
 
Kの周りにいれば、理不尽なことを時々されるが、おいしい思いができることが多い。
だからこそ、Kに媚を売り、気に入ってもらうと必死になる。
 
金がなければ、みんなKのことなんて見向きもしなくなるだろう。
 
もちろん俺だってそうだった。
Kみたいな我がままで面倒くさいやつと、好き好んで一緒に居たいと思うわけがない。
全てはKが持っている「もの」が目当てなのだ。
 
だが、高校生にもなるとKの方も、そのことに気付いたのか、あからさまな取り巻きは切っていっている。
その当時、Kの周りにいるやつは俺を含めて3人ほどになっていた。
 
俺は小さい頃から結構、空気が読めるのと演技するのが得意だったこともあり、Kからは親友だと思われている。
そして、その分、見返りも大きい。
 
なんとKの「コレクション」を見せてもらえるほどになった。
 
そのコレクションというのは、いわゆる裏ビデオというやつだ。
学生の頃はビデオのレンタルショップで普通のアダルトビデオさえ借りられない時期だ。
そんなときに、裏ビデオなんて、かなりの衝撃だ。
 
そんな俺に、Kはコレクションの棚から好きなのを借りて行っていいなんて言ってくれたのだ。
それはもう、その当時の俺は興奮状態で、毎週のようにビデオを借りていた。
 
ただ、Kはビデオを貸してはくれるが、絶対に譲ってはくれなかった。
必ず、次の週には返すことが条件で貸してくれる。
 
俺はお気に入りのものを何とか自分の物にしたいと思い、何とかダビングできないかを模索した。
しかし、Kが持っているビデオには全てコピーガードが付いていて、絶対にコピーができなかった。
 
そういうことに詳しいやつに、なんとかガードを解くことができないかを相談してみたが、無理だった。
その当時の最先端の技術らしく、どうやってもコピーガードは突破できないのだという。
 
仕方なく、俺はコピーを諦めた。
 
そんなある日。
適当にビデオを選んでいたら、衝撃的な内容のものが入っていた。
 
いわゆる若い女性のスナップビデオだ。
犯人はマスクを被っていたが、声が若そうだった。
 
それは本当に生々しく、そのときは思わず吐いてしまった。
完全にトラウマになってしまい、30年経った今でも、鮮明に頭の中の記憶に残っている。
 
そして、その日以来、俺はKからビデオを借りることはやめて、Kと距離を置くことになった。
 
 
そんな30年ほど前のことを思い出したのは、あることがきっかけだった。
俺の職場に新入社員が入って来たのだが、その中に、そのスナップビデオで映っていた人に似ていた人がいたのだ。
 
さりげなく、彼女に色々と聞いてみた。
 
最初は頑なに喋ろうとしなかったが、歓迎会の時にお酒を飲んでいる彼女から何とか情報を聞き出した。
 
なんと、彼女の叔母が30年前から行方不明なのだそうだ。
しかも、彼女の叔母が住んでいたのは、30年前に俺が住んでいたところと同じ町だった。
 
つまり、あのビデオは本物で、あのとき、俺が住んでいた町であんなことがあったなんて、とてもじゃないが信じられない。
 
このことは墓の下まで持って行くことにしよう。
 
終わり。

■解説

Kが持っていたビデオはどれもコピーカードがついているため、複製ができない。
つまりはスナップビデオの『原本』ということになる。
なぜ、Kはそんなものを持っていたのか。
犯人は犯罪の証拠になるものを他人に渡すとは思えない。
つまり、Kがこのスナップビデオの犯人である可能性が高い。

 

アットホーム

2月。
もうすぐ大学も卒業になる。
だけど、まだ就職の内定をもらっていない。
 
今は人手が足りないと言われているから、すぐに決まるだろう。
そんなことを考えているうちに、就活が遅れて、1月から慌てて始めてみたがほとんどの会社がもう新卒の採用が決まっていて、そもそも募集自体がない。
 
このままニートになるのかな、なんて思っている中、親から連絡が来る。
 
「ニートは許さないから。就職が決まってないなら家には入れないからね」
 
完璧に退路を断たれた。
大学時代もずっと仕送りでなんとか生活してたから、バイトはやっていなかった。
だから、バイトを続けてなんとか生活を維持する、なんてこともできない。
 
とにかく、どこでもいいから就職しなくちゃならない。
友達からは「そんな考えで決めたら、ブラック企業を引くぞ」と言われた。
 
確かに友達の言うこともわかる。
だが、ホームレスになるよりは、まだブラック企業の方がマシだろう。
 
それに、とりあえずブラック企業に入って、裏で就職活動すればいい。
そして、決まれば、スパッと辞めればいいだけだ。
 
ということで、俺は今からでも入れそうな企業を片っ端から受けた。
それでも何社か落ちてしまう。
 
そんな中、ついに面接まで漕ぎつけた会社があった。
面接はその会社の社長が直接やっていて、その社長がこんなことを言った。
 
「うちはアットホームな職場だよ。というより、社員は家族そのものなんだ」
 
出たよ。ブラック企業の常套文句。
良いところがないから、苦肉の策でアットホームを推すしかない。
完璧にブラック企業だろう。
 
だけど、ここを断ったら、もう他の会社に決まる気がしない。
 
ここはやっぱり当初の予定通り、一旦、この会社に入って、裏で就職活動をしよう。
 
そう思っていたら、面接の場で採用が決まった。
本当に人手がいないんだろう。
 
いつでも逃げられるように準備をして出社する。
だが、心配してたのとは裏腹に、普通の会社だった。
社員自体が少ない。
なんと、家族経営をしている会社なんだそうだ。
 
新入社員なのに、定時で帰らせてくれる。
仕事も怒鳴られることもなく、みんな優しい。
これなら、ずっとこの会社でやっていけそうだ。
そう思いながら3ヶ月が経った。
 
会社に行くと、よくわからないが、ある書類に名前を書いてハンコを押して欲しいと言われた。
言われた通り、名前を書いてハンコを押した。
 
そして、その日に帰ろうとしていたら、社長がやって来て「うちに住むことになったから」と言われた。
どういうことかと聞くと、「一人暮らしだと家賃もかかるし、ご飯や洗濯、掃除なんかも大変だろう? うちなら、家政婦さんがいるから全部やってくれるんだよ」と言われた。
 
部屋もいっぱいあって、ちゃんと一部屋を貰えるらしい。
正直、家事全般が面倒だと思っていた。
家賃が浮くのと、ご飯が出てくるというのは魅力的だった。
 
家に帰っても社長がいるというのはちょっと気を使うかもしれないが、社長は気さくな人で、本当に父親のような感じがしていた。
だから、一緒に住んでいても、そこまで苦にはならないだろう。
 
そう思って、了承した。
 
その日のうちに業者がやってきて、社長の家に引っ越しが住んだ。
 
そして、その日から全てが一変した。
 
まず、驚いたのが社長の家に、社員全員が住んでいるということだった。
まあ、家族経営だからあり得ないことはないけど、まさか、全員が一つ屋根の下で生活をしているとは思ってもみなかった。
 
さらに、業務に対しても厳しくなった。
ちょっとしたミスでも怒鳴られ、帰るのはいつも深夜2時くらい。
さらに朝は8時出勤。
 
家賃が浮くだろうと言われて、その分、給料が減らされた。
もちろん、残業代も出ない。
御飯も出るには出るが、卵かけごはんと納豆という簡素な物ばかり。
肉なんてほとんど出ない。
 
騙された。
これはさっさと次の会社を見つけて出て行くしかない。
 
だが、いつも深夜2時まで働かせ、朝は8時には会社に行かないとならない。
休日も週に1回だけで、その日はずっと寝て過ごさないと次の週は生き残れない。
こんな状態で、次を見つけられるわけがない。
 
そんな状態で2年が経つ。
身体と精神はもう限界だった。
 
これならまだホームレスの方がいい。
というより、事情を話せば親だってわかってくれるはずだ。
仕事が決まるまでという条件で家において欲しいと言えば、受け入れてくれるはずだ。
 
ということで、会社から逃げ出すことにした。
部屋の物はそのまま残しておくことにする。
というより、そもそも大事な物なんて買う暇がなかった。
 
ただ逃げ出すのも癪なので、そのまま労働基準監督署に駆け込んだ。
絶対に労働基準法を逸脱していると報告した。
 
すぐに調査が行われる。
 
だが――。
 
会社は全くおとがめなしだった。
 
どういうことかと聞いたら、逆に怒られてしまった。
変なイタズラをするんじゃない、と。
 
話を聞いてみると、なんと、そもそも会社に勤めていないことになっていた。
入社して3ヶ月で辞めていたことになっている。
社員じゃないのに労働基準法は適用されないと言われたのだ。
 
混乱した。
一体、どうなっているのかと。
 
そして、労働基準監督署の人にこう言われた。
 
「家族なんですから、仲良くしてください。子供に訴えられるなんて、お父さんが悲しみますよ」
 
終わり。

■解説

この会社は面接時に「社員は家族そのものなんだ」と言っている。
さらに、この会社は「家族経営」である。
これは家族で経営しているのではなく、「社員を家族にしている」と考えられる。
つまり、語り部は養子にされ、「家事手伝い」をさせられていたため、労働基準法には引っかからなかったわけである。

 

殺し屋の恩返し

俺は昔、友達と面白半分で株をやって、大儲けした。
本当なら貯金でもすればよかったんだけど、どうせギャンブルっぽい感じで手に入ったお金だったので、家を買うことにした。
 
とはいっても、マンションとか一軒家を買えるほどではない。
なので、田舎の町外れの別荘を買った。
避暑にでも使おうと思ったのだ。
 
最初の頃は1年に1回は行くようにしていたが、次第に、良く頻度は少なくなっていった。
 
いまでは3年に1回くらいだろうか。
しかも避暑というよりは、掃除しに行っているという感じだ。
 
正直、買わなければよかったと後悔している。
かといって、売るのも癪に障るし、なんか面倒くさい。
 
今回もお盆休みを使って、別荘に行く。
たまにはバーベキューでもしようと思って、肉やら酒やらを買い込んで、4日くらい滞在するつもりだった。
 
別荘についてみると、別荘の近くに誰かが倒れていた。
町の外れなので、周りには誰もいない。
 
近寄ってみると、倒れているのは男で、怪我をしたようで血を流していた。
俺は慌てて救急車を呼ぼうと思ったのだが、倒れていた男が身を起こし、俺の腕を掴んだ。
 
そして、救急車は呼ばないで欲しいと頼まれた。
とりあえず俺は男を別荘に連れて行き、手当てをした。
 
男は何度もお礼を言ってくれる。
だけど、俺はどうして救急車を呼んでほしくないかの理由を聞いた。
 
最初は教えてくれないだろうなとは思ったが、男は意外なことに話してくれた。
 
その内容は驚愕なものだった。
なんと、男は殺し屋だというのだ。
 
それを聞いたときは適当なことを言っているのかなと思ったのだが、男は詳しい方法まで語り出して道具まで見せてくれた。
それはとても嘘だとは思えない。
 
いや、例え嘘だったとしても、俺にとっては十分面白かった。
その中でも、他人になりすまして、ターゲットに近づくなんていう方法はなるほどな、と思った。
 
それから4日が経つと、男の傷はすっかりと癒え、普通に立って歩けるようになっていた。
 
俺もそろそろ別荘から家に帰ることを話すと、男は深々と頭を下げて、礼を言ってくれた。
殺し屋でも、礼儀正しい人がいるんだなと、俺は感心したのだった。
 
終わり。

■解説

殺し屋が他人に自分のことをしゃべるだろうか?
ましてや、語り部が誰かに話すことも考えられる。
語り部の言うように、話さない、もしくは嘘を言うこともできたはずである。
それでは、なぜ男は色々と話したのだろうか。
それは男が語り部を無事に帰すつもりがないからである。
つまり、男は、今度は語り部になりすますつもりである。
色々と話したのは、語り部に対しての、冥途の土産だったのかもしれない。

 

ある旅行にて

私はお盆休みを利用して、友達と2人で海外旅行に行くことにした。
生まれて初めての海外旅行。
多少、不安があるけど、ワクワク感の方が強い。
前の日なんかも、楽しみでなかなか寝付けなかったくらいだ。
 
それは友達も同じだったみたいで、目の下にしっかりとクマが出来ていた。
待ち合わせの空港で会った時は、お互い、相手の顔を見て大爆笑してしまった。
 
飛行機の中では、友達と二人で旅行プランを確認しながら、はしゃいでいた。
 
今回の旅行は旅行会社のプランジャなく、友達が立てたプランだ。
というのも、友達が行きたがっていたのは心霊スポットだったから。
そんな場所をプラン内に入れている旅行会社はなかったので、友達が自分でプランを立てたというわけだ。
 
私も心霊系は嫌いじゃないけど、そこまでして行きたいかと言われると、実はそこまでじゃない。
ただ、この旅行は友達が計画してくれたものだし、ちゃんと旅行の後半では私の行きたい場所もプランに入れてくれているから、口は出さずに付き合うことにしたのである。
 
現地に到着したら、まずはレンタカーを借りる。
着いた日にホテルじゃなく、さっそく心霊スポットに向かうというわけだ。
 
本当はホテルに泊まりたかったところだけど。
 
ただ、車を運転する友達が「右側通行だー」とはしゃいでいた。
私は免許を持っていないので、そこまでインパクトはなかったんだけど。
 
日本とは違って、道はまっすぐ続いている。
平坦な道だ。
このペースなら、ちゃんと夕方くらいには心霊スポットになっているゴーストタウンに到着できるのだそうだ。
 
「ここのスポットはね、世界的にも有名で、いつでも肝試しに来てる人が多いんだって。それはそれで萎えるよねー。やっぱり、心霊スポットは二人だけで回りたいし」
 
口では不満そうに言っているが、表情はまんざらでもない。
きっと、楽しみでしょうがないんだろうね。
 
私としては他にも人がいてくれた方がいいんだけど。
だって、怖いでしょ。
 
真っすぐで平坦な道をずっと走っていると、前日の寝不足からか、ウトウトしてしまう。
ただ、友達が運転しているのに、私は寝るわけにはいかない。
そう思って、必死で睡魔に抗っていた。
 
でも、睡魔っていうのは抗えない。
私はいつの間にか、寝てしまった。
 
目を覚ましたのは、車の酷い揺れの衝撃だった。
 
びっくりして目を開けると、そこは町の中だった。
町というより、廃墟だらけの場所。
友達が言っていた、心霊スポットのゴーストタウンなんだろう。
着いたんだと思い、隣を見ても運転席に友達はいない。
 
きっと私が寝てしまったせいで、友達が私を起こさないように一人で行ってしまったのかもしれない。
友達はそういうところがある。
こんなところに一人で残される方がずっと怖い。
気を使うところがあるのだけど、返ってそれが逆効果になることが多いのだ。
 
友達が帰って来るのを待つしかないかと思っていたのだが、いつまで経っても帰って来ない。
そこで、私は車から出て、友達を探しに行くことにした。
 
友達の名前を叫びながら歩く。
すると、結構、人がいることに気付いた。
 
そう言えば、友達は人気のスポットで、いつでも肝試しをする人がいると言っていた。
きっと、そういう人たちなんだろう。
 
私はたどたどしい英語で、友達のことを聞こうと思って話しかけたが全て無視されてしまった。
明らかな無視。
肝試しを邪魔されたから、怒ったのかもしれない。
 
さらに進んでいると、救急車とパトカーを見つけた。
さすがに警察は無視しないだろうと思い、声をかけた。
 
だけど、無視されてしまった。
 
そんなことなんてあるのだろうか。
そう思っていると、私は衝撃的なことに気付いた。
 
ここにいる人や車は全部、透けているのだ。
 
そう。
つまりは幽霊ということだ。
 
さすが、世界的にも有名な心霊スポットだ。
こんなに幽霊が多いなんて。
 
私は恐ろしくなって、その場を逃げようとした。
 
だけど、そのとき私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
友達の声だ。
 
声がした方向を見ると、そこには血だらけのお友達が立っていた。
物凄い大声で泣き叫んでいる。
 
私が駆け寄ろうとしたときだった。
 
突然、横にタクシーが停まった。
 
「あんた、早く乗って!」
「え? でも……」
「いいから、早く!」
「それなら、友達も」
「ダメだ! あんただけしか無理だ。早く乗って!」
 
私はその運転手さんの剣幕に押されて乗ってしまった。
すると、タクシーは凄い勢いで走り出す。
 
「いやあ、危なかったよ。あんた、危うく連中に連れられて、さ迷うことになるところだったんだ」
 
タクシーは道にいる人たちをすり抜けて進んでいく。
やっぱり、みんな、幽霊だったんだ。
私の友達も……。
 
「安心しな。俺がちゃんと、あんたを送り届けてやるからさ」
 
私はホッと一安心した。
海外にも親切な人はいるものだ。
 
終わり。

■解説

語り部は車の衝撃で目を覚ましている。
しかし、車には何の損傷もないのはおかしい。
つまり、幽霊なのは語り部の方。
タクシーも幽霊で、語り部がこの世に迷って幽霊にならないように、送り届ける役目である可能性が高い。

 

ブレスレッド

その女性はその日、同窓会に出席する予定だった。
せっかく、久しぶりに同級生にあるのだから、おしゃれをしたいと思っていた。
しかし、その女性はアクセサリーを持っていない。
だからといって買いに行く時間もお金もなかった。
 
そこで、何かないかと家の中を探し回ると昔買ったブレスレッドが出てきた。
少し大きめだったが、何もないよりはマシだと思い、女性は嵌めていくことにする。
 
そして、ドレスを着て同窓会会場へ向かった。
 
向かっている途中、女性は近道をするために路地裏を通ることにする。
既に辺りは暗くなっており、街灯もない道。
人通りもほとんどなかった。
 
そんな中、女性は何者かに殺されてしまう。
 
数時間後、通行人に発見され、事件が発覚した。
警察は発見者から詳しい話を聞く。
 
犯人は女性の財布、携帯、ブレスレッドを盗んだことから強盗という線で捜査を開始した。
 
終わり。

■解説

女性がブレスレッドをしていたことは犯人しか知らないはずである。
つまり、第一発見者が犯人ということになる。

 

カカシ

その村は山奥にあり、ほとんど外から人がやって来ることがなかった。
なので、村では自給自足で生活している。
そのため、農業に被害があると村全体が危機に陥ってしまう。
 
村の人たちは農家を支援し、農作物に被害が起きないように細心の注意を払っている。
 
そんな中、カラスが大量に発生し始めた。
このままでは農作物が食い荒らされてしまう。
 
そこで村の人たちはカカシを立てるようにした。
しかし、カラスは頭がよく、それが人形だと感付き、堂々と畑に落ち立つ始末だ。
 
人が立っていれば、カラスは寄って来ない。
しかし、24時間、誰かがずっと畑に立っているというのも難しい。
 
そこで村の人たちは苦肉の策で新しいカカシを立てた。
 
それは思いのほか、効果があった。
本物と見分けがつかないのか、警戒して畑に降りて来ない。
 
村の人たちは安堵した。
これで農作物の被害は少なくなると。
 
しかし、ある問題があった。
 
それは頻繁にカカシを入れ替えないと、逆にカラスたちが群がってしまうのである。
 
終わり。

■解説

村人たちは死体をカカシとして立てた。

 

トレジャーハンター

その男は世界で一番のトレジャーハンターと呼ばれていた。
噂通り、その男は前人未到と思われる場所に眠るお宝を次々と探し当て、手に入れてきた。
 
その男に入れない場所はないとさえ囁かれていた。
 
そんなあるとき、男は今まで生きて出てきた者はいないと言われる危険な遺跡に挑戦しようと考えた。
周りからは、いくらなんでもあそこだけは無理だと言われ、そのことが返って男の闘争心に火をつけた。
 
男は万端の用意をして、その遺跡に潜り込んだ。
 
数時間後。
男は見事、遺跡中のお宝に辿り着くことができた。
 
だが、その日以降、男の姿を見た者は誰もいない。
 
終わり。

■解説

男は遺跡の中の宝を手に入れることはできたが、遺跡から出ることが出来ずに死んでしまった。

 

オルゴール

男は作曲家だった。
だが、駆け出し時代は全くヒットを出せず、生活もままならない状態だった。
 
そんな男を支えたのがオルゴール職人だった妻であった。
妻は男とは真逆で、人気の職人で、政財界の人間からもオーダーメイドを頼まれるほどだった。
妻のおかげで生活に困ることはなく、作曲に専念できた男だったが、作る曲、作る曲、全てヒットしなかった。
 
自分には才能がない。
 
そう考えた男は作曲を辞めようとしていた。
だが、そんなとき、妻が重い病にかかり死んでしまう。
妻は息を引き取る間際、男に作曲を辞めないで欲しいと言い残した。
 
男は妻の言葉を胸に、妻を失った想いを曲に込めた。
 
すると今までが嘘だったかのように、男が作曲した曲がヒットし始める。
ブームに乗り、男の曲は世界的に大ヒットを納める。
 
それから30年後。
男が還暦を迎えたとき、妻から男宛にあるものが届いた。
 
それは妻の手作りのオルゴールだった。
 
どうやら、生前に男のために作っていたオルゴールを、男の還暦に届くように手配していたようだった。
 
男は感動して、オルゴールを開いた。
流れてきたのは、男の一番ヒットした曲だった。
 
男は改めて長年、自分を支えてくれた妻に感謝した。
 
終わり。

■解説

男の作った曲がヒットしたのは、妻が亡くなってからである。
つまり、男の一番ヒットした曲を、妻は知らないはずである。
妻は一体、どうやってこのオルゴールを作ったのだろうか。

 

秘密のレストラン

森の奥に、VIPしか行くことができない秘密のレストランがあるのだという。
そのレストランは味が抜群で、一回行くと癖になり、定期的に通うようになるという噂だった。
 
そのため、かなりの高額な料金にも関わらず、リピーターが多いらしい。
何人もの人間が、そのレストランの味の再現を試みたが、どうやっても作れない。
なので、あの味を食べるには、その秘密のレストランに通うしかなかった。
 
そんな噂のレストランだが、本来はVIPしか入ることができないが、一般の人でも申し込みの中から抽選で何組かレストランに入れるのだという。
 
男は彼女のデートに使いたいと思いながらも、どうせ当たらないだろうと半分諦めながら申し込んだ。
すると、一週間後に当選の連絡がきた。
 
さっそく男は彼女を連れてレストランに向かう。
ただ、その日はあいにくの雨。
しかも、レストランは山奥ということで、行くのに時間がかかってしまった。
それでも彼女は秘密のレストランに行けるということではしゃいでいた。
 
レストランに着くと、雨は止んでいた。
予約時間から少し遅れてしまったことに、男はマズいなと思いながらレストランの入り口に向かう。
その途中、自分たちと同じように、レストランへと向かう足跡だけが付いてた。
男は自分たち以外にも、客がいるんだと思い、レストランのドアを開けた。
 
すると愛想のいいウェイターが、「よかったです。いらっしゃらないかと思って、少し焦ってしまいました」と笑った。
男は遅くなったことを謝罪し、席に着いた。
 
そのとき、男は気づいた。
店内には誰も客がいなく、貸し切り状態だった。
 
男はウェイターに「俺たちの貸し切りですか?」と問いかけた。
するとウェイターは「いえ、この後、団体客が入ってるんですよ」と答えた。
 
終わり。

■解説

男がレストランの前で、足跡を見つけている。
そして、その足跡はレストランに向かう足跡だけだった。
つまり、レストランから出てくる足跡はなかったということになる。
しかし、レストランに入ると、客は男たちだけだった。
さらに、ウェイターはこの後に団体客が入っていると言っている。
このレストランはどんな人でも、味の再現ができない。
そのことから、このレストランでは『変わった』食材を使っている可能性がある。
もしかすると、それは人肉で、一般客は食材として呼ばれたのかもしれない。

 

モーニングコール

男は物凄く寝起きが悪かった。
家でも、3つは目覚まし時計を使って、さらに妻に起こして貰ってようやく起きられるほどだった。
 
そんな男が、あるとき、出張を打診された。
その出張では社運をかけたプレゼンの会議がある。
失敗すれば左遷されてしまうほどの重要な会議だ。
だが、逆に言うと成功させれば一気に昇進が狙える。
 
男はそのチャンスにかけることに、出張を受けた。
 
会議の前の日にホテルに到着する。
絶対に、明日は寝坊できない。
 
男は夕方にはベッドに入って、早めに寝ることにした。
 
だが、それでも起きられる自信はない。
そこで、男はモーニングコールをすることにした。
ホテルの人に8時にコールしてくれと頼むことにする。
 
17時からベッドに入ったが、寝られるわけがなかった。
だが、2時間もするとウトウトしてくる。
そして、男は寝ることができた。
 
すると突然、電話がかかって来る。
 
もう朝か、と男は飛び起き、電話を取る。
それはフロントからで、8時ですというものだった。
男は礼をいい、着替えようとする準備していると、ある違和感を覚える。
それは外が暗いからであった。
 
男は時計を見て、大きくため息を吐いた。
 
ホテルのフロントは20時にコールしてきたのだ。
 
男は、朝の8時に決まってるだろ、と悪態づいて、ベッドに入った。
だが、一回、起きてしまったせいで、なかなか眠れなかったのだった。
 
終わり。

■解説

ホテルのフロントは8時にコールする依頼は叶えたと思っている。
つまり、モーニングコールの8時には電話がかかってこない。
そして、男は寝起きが悪い。
男は会議に寝坊してしまう確率が高い。

 

紙粘土

僕のクラスに、だいちゃんっていうイジワルな奴がいる。
僕もよく、イジワルされる。
カバンを隠されたり、変な技をかけられたり。
だいちゃんは、体が大きいから、喧嘩しても絶対に叶わない。
だから、僕はいつもやられっぱなしだ。
 
今日も図工の時間で紙粘土で動物を作りなさいって言われて、僕は馬を作った。
そしたら、だいちゃんは笑って、変な猫だなって言った。
 
そんなこと言わなくたっていいじゃないか。
僕だって一生懸命作ったのに。
 
それから次の日。
僕が学校に行ったら、僕の馬の首が長くされてた。
まるでキリンだ。
しかも、目を3つにされてた。
 
もう、なんでこんなことするんだろう。
 
終わり。

■解説

語り部は『紙粘土』で馬を作っている。
そして、紙粘土は一度乾いてしまうと、形を変えることはできない。
なので、イタズラで首を長くすることはできないはずである。
もしかすると、この紙粘土の馬には、何かが宿ってしまったのかもしれない。

 

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