お墓参り
お墓参りは家族全員ですることにしている。
まあ、当たり前といえば当たり前なのだが、今はお墓参りをする人自体が少なくなって来るらしい。
でも、俺は昔、おじいちゃん子だったこともあり、毎年、お墓参りはかかすことはなかった。
それは結婚し、子供が出来ても同じだ。
おじいちゃんに俺の子供たちを見せたいということもある。
子供たちはお墓参りがよくわかっていないようで、普段、来ない墓地にはしゃいでいる。
こういうのも何となくいいなと思う。
おじいちゃんに孫を見せている感じがするからだ。
そして、次の年。
もちろん、俺たちは家族全員で墓参りに来た。
「あなた。未来は車で寝ちゃったみたい」
「そっか、起こすのも可哀そうだし、今回はさっとお参りして帰ろうか」
「そうね」
そうして、俺たちは二人で手を合わせて車に戻った。
終わり。
■解説
最初は、語り部は子供「たち」と言っている。
ということは、子供は二人はいることになる。
しかし、次の年は未来という子供は車で寝ていて、語り部と妻の二人だけでお参りをしている。
家族全員で墓参りに来ているのに。
ということは、この一年で子供が亡くなっていることになる。
未来予知
その男は未来予知ができた。
意識を集中することで、15秒の間、自分で見た未来が見えるというものだった。
最初、男は周りに自分が、未来が見えると言ったが信じてもらえることはほぼなかった。
しかし、男が言うことが何度も当たったことにより、徐々に信じる者が多くなっていく。
SNSでも、男は宗教の教祖と同じように崇められるようになった。
気を良くした男は積極的に未来予知をして、発信し続ける。
だが、あるとき男は2年より先の未来がどうやっても見えないことに気づいた。
何度も何度も試してみるが、2年より先の未来が見えない。
そこで男は世界が滅ぶのだと悟った。
それを、自分を支持してくれる人たちへと伝える。
そして、男は世界が滅ぶ前に自分たちで安らかな最期を遂げようと呼びかけた。
2年の間で、その呼びかけに1000人以上集まる。
男は自分を支持してくれる人たちと共に、自ら命を絶った。
終わり。
■解説
自ら命を絶ったので、男は未来が見えなかっただけである。
つまり、世界が滅んだわけではない。
瓜二つ
あれは3年前くらいだっけな。
俺は仕事柄、出張が多くて、全国に飛び回ってたんだ。
俺も旅行が好きだからさ、別に苦ではなかったよ。
というか、天職だなって思ったくらいだ。
旅行先で一番の楽しみは食べ物だね。
居酒屋に行って、変わったメニューがあれば注文するのが流れかな。
で、居酒屋だと、お酒が入るから隣にいる人と仲良くなったりすんだよね。
あれはどこだったかな?
思い出せないな。
まあいいか。
とにかく、そのときも一人で飲んでた時に隣に一人客が来たから、つい話しかけちゃったんだよね。
そしたら、妙に盛り上がっちゃってさ。
なにがきっかけだったかな。
たぶん、俺が日本中を飛び回っているって話したのがきっかけだったと思う。
そしたら、相手にこんなことを聞かれたんだよ。
「世界には自分と瓜二つの人間が2人いるんだって。君は自分に似た人間ってみたことある?」
確かに、その話は聞いたことある。
でも、いくら全国を旅行すると言っても、さすがに見たことは一人もなかった。
たぶん、そのときも、そう言ったと思う。
で、今度は俺がその人に聞いてみたんだよ。
「あなたは会ったことあるの?」
「いやあ、残念ながら僕に瓜二つの人間はいないんだ」
だってさ。
終わり。
■解説
会ったことがないというのはわかるが、いないというのは変である。
もしかすると、この人物は既に自分に似た人間を見つけて、既に死んでいることを知ってるのかもしれない。
彗星
ある年、少年はクリスマスプレゼントに天体望遠鏡を買ってもらった。
そして、その日以来、天体を観測するのが少年の日課となる。
そんなあるとき、少年はある星を見つけた。
それはどんな本やネットにも載っていない星だった。
もしかしたら、自分が最初に発見したのかもしれないと、少年は興奮した。
少年は誰にもそのことを言わずに毎日、その星を観察していた。
すると、不思議なことにその星は日に日に大きくなっているようだった。
そんな不思議な星に、少年は魅了され、毎日、大きくなっていく星を観察していくのであった。
終わり。
■解説
少年が見つけた星は大きくなっているのではなく、近づいてきている可能性が高い。
当たり屋
男は生まれつき、体が人よりも頑丈だった。
なので、男は当たり屋で生計を立てることにした。
高級車を見つけては、勢いよく飛び出し、轢かれることでお金を巻き上げていく。
そんな生活を30年以上続けてきた男だったが、さすがに体にガタがき始めてきた。
もうそろそろ、こんなことから足を洗いたい。
そこで男は猛スピードで走る高級車に轢かれることで大けがをして大金を巻き上げるという計画を立てた。
そして、男は猛スピードで走る高級車に向かって行った。
男は望み通り、当り屋から足を洗うことができた。
終わり
■解説
男は轢かれて死んでしまった。
イタズラ電話
隆司はスゲー怖がりだ。
特に心霊系はビビりまくりで、それを見るのがかなり面白い。
先週も、俺の家に泊まりに来た時に、呪いの電話っていう怪談話の動画を見せているときに、非通知で隆司に電話してやった。
タイミングもばっちりで、すげービビってた。
いやー、動画に撮っておけばよかったな。
大体、呪いの電話なんて嘘くさい怪談話を信じる方が悪い。
なんてことを考えていたんだけど、心霊番組を見てる最中にいきなり電話がかかってきた。
しかも、番号は知らない番号だ。
恐る恐る電話を取ってみると、隆司だった。
「なんだよ? 携帯の番号変えたのか?」
「は? 変えたの先月だぞ。言ったじゃん」
「そうだっけ?」
たしかに聞いたような気もする。
それにしても、やっぱりタイミングが悪いと、ビビるもんだな。
これからは隆司をバカにするのはほどほどにしておこう。
終わり。
■解説
隆司が携帯の番号を変えたのは先月である。
そうなると、呪いの電話の怪談話を聞いていた時に、語り部がかけた番号は繋がらないはずである。
では、あのときにかかってきた電話は一体、なんだったのだろうか。
山奥にある村
俺が生まれたのは山奥にある小さな村だ。
中には何もない村に嫌気がさして出て行く人もいるが、俺はこの村を気に入っている。
確かに物が少なかったり、医者がいないので何かあった場合は山のふもとにある町までいかないとならないので、多少は不便だ。
それでも、俺はこの村を出たいとは思ったことはない。
俺はこの村で生まれ、この村で死ぬのだろうと思っている。
毎日が同じことの繰り返しという人もいるが、俺にとってはそんな平穏な日々が何よりも大切なのである。
だが、そんな平穏も、最近は崩されつつある。
それは疫病が原因だ。
なんでもネズミが原因で、流行っているらしい。
そこで俺たちはネズミの徹底的な駆除を試みた。
多くの罠を張り、猫を大量に借りてきて駆除を進めていく。
その甲斐あってか、村でネズミを見ることはなくなった。
もしかすると、この辺りのネズミは全て駆逐できたのかもしれない。
これで、疫病の脅威も去っていくだろう。
だが、最近、オオカミの群れが村の近くまで来るようになってきた。
これが新たな問題にならなければいいのだが……。
終わり。
■解説
ネズミを駆逐したせいで、ネズミを餌にしていた動物が減ったのだと考えられる。
そして、その動物が減ったことにより、食物連鎖でオオカミの食べ物も減ってしまった。
そのため、村に現れるようになった可能性が高い。
つまり、このあと、オオカミの群れに村人が襲われる事態になる。
防犯カメラ
女はある男にストーカーされていた。
SNSでやり取りしていたのだが、載せていた写真や書き込みの内容から自宅を特定されてしまった。
女は最初、男のことに気づかなかったが、最近、家の中から物音がしたことや、家の中の物の位置が変わっていたこと、物が無くなったことに気づき、防犯カメラを設置した。
すると、その防犯カメラに男が家の中に侵入しているのが映っていた。
女はすぐにその映像を警察に持っていく。
すると、男はすぐに捕まり、二度と、女に近づかないという念書を書かされてた。
男は反省したということもあり、女は許すことにした。
しかし、それから数日後。
寝ていると、勝手にドアが閉まる音がした。
女は警戒し、すぐに警察に電話した。
警察が駆けつけ、家の中を調べたが、人が侵入した形跡はない。
そして、防犯カメラを確認したが、あの男の姿は映っていなかった。
終わり。
■解説
今回のことは2つのパターンが考えられる。
1つは、「あの男」は映っていなかったが「違う人間」は映っていたというパターン。
女は一人ではなく、複数の人間からストーカーされていたということになる。
もう1つは、「何も映っていなかった」パターン。
何も映っていないのに、家の中から物音がするというのはおかしい。
もしかすると、「人間ではない者」が家の中にいるということになる。
映画化
1996年、男は殺人を犯した。
金目当てでの強盗に入った際、住人に抵抗されたことで逆上し、一家全員を殺してしまったのだ。
男は金を盗み、その家を後にしたが、すぐに近隣の住民の通報により事件が発覚する。
家の中には様々な手掛かりを残したことにより、すぐに犯人がその男だと特定された。
この事件はすぐに男が捕まって解決するはずであったが、警察は男を捕まえることはできなかった。
そのことで、世間では一種のミステリーと話題となったのだった。
だが、男が捕まらなかったのはすぐに国外へと逃げていたからだった。
30年が経ち、時効になったころ合いを見計らい、男は密かに帰国し、ひっそりと暮らし始める。
そんなとき、ある人物が男のことを嗅ぎつけ、やってきた。
その人物は「映画を作らないか」と言い出した。
あの事件の詳細、どうやって警察の手を逃れて海外へと出られたのか。
それを映画にすれば大ヒット間違いなしだと言われる。
男は生きていく中で金が必要だったため、それを了承する。
その人物の目論見通り、その映画は大ヒットを記録した。
映画の中で、事件の詳細が語られたこともあり、視聴者は映画に釘付けになった。
そして、男の手には多くの金が転がり込んだのだった。
終わり。
■解説
現在では殺人罪や強盗殺人の時効は廃止されているが、男が事件を起こしたのは1996年で、そのときはまだ、時効は廃止されていない。
なので、男は捕まらないはずだが、男は自ら映画で海外に行っていたことを語っている。
海外にいる間は時効の年数は止まっているので、この後、男は警察に捕まることになる。
ホラー漫画
最近、知ったんだけど、中学時代に一緒のクラスだった奴が漫画家デビューしてたらしい。
なんでも、ホラー系の話を描くらしくて、その界隈だと結構人気とのことだ。
そいつが人気なのは、本当にあった話というのがポイントのようだ。
なんでも、描いてある話は全て、現実にあったことらしい。
知り合いが描いてるということで、俺も興味が出て、そいつの漫画を買って読んでみた。
本当にあった話を描いているというのは確かで、俺が通っていた当時の学校で起こったことも描いてあった。
あの頃は心霊系が流行っていて、やたらと心霊スポットとかに行く遊びが流行ったため、事故などが多かった。
そのことを少し大げさにはしているが、ほとんどあったままが描いてあった。
けど、俺はある話について、かなり腹が立った。
それは俺の親友だった奴の姉ちゃんが電車に飛び込んだという事件のことを描いていたからだ。
しかも、結構、詳細に描かれていて、見る人が見れば誰かがわかるはず。
いくらなんでも、あの話を使うなんて許せなかった。
念のため、親友のところに連絡してみると、その話を使いたいという打診もなかったそうだ。
俺は親友と話して、そいつを訴えることにした。
そして、次の週に俺は親友と待ち合わせをして、出版社に行くつもりだった。
その途中でふと、あいつの漫画の新刊が出ているのが目に入った。
また、人を傷付けるような話を描いているのか?
俺はそう思い、なんとなくその漫画を買って、待ち合わせまでまだ時間があったので読んでみる。
今回の話はそんなに怖い話ではなかった。
読者が、読んだ漫画に憤慨し、文句を言うために出版社へ向かう途中、乗っていた電車に事故があり、運悪く死んでしまうという話だった。
こんな電車の事故なんてあったっけ?
俺がスマホを出して調べようとしていたら、ちょうど親友がやってきた。
まあいいや。出版社に行った後に調べてみよう。
そして、俺たちは出版社へ向かうため、電車に乗った。
終わり。
■解説
その漫画家が描いた漫画は、全て本当にあった話ということである。
そして、語り部が読んだ漫画の新刊では、死んだキャラクターの状況は『語り部と同じ』である。
本当にあった『後』の話だけではなく、漫画化された後に、その事故が起こったとしても『本当にあった話』になる。
その漫画家は本当にあった話を集めるだけではなく、未来予知もできる可能性がある。
つまり、この後、語り部は電車の事故で死んでしまうかもしれない。