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意味が分かると怖い話 解説付き Part351~360

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マンションのエレベータ―

結婚して5年。
俺はようやく自分の家を手に入れることができた。
 
一軒家ではないが、高層マンションの15階。
家の窓から見下ろす夜景は本当に最高だ。
 
ただ、1つだけ問題がある。
それはエレベーターだ。
 
このマンションには1台しかなく、なかなか回って来ないこともしばしばだ。
しかも、乗れる人数は5人までと少ない。
朝の出勤時間なんかは、混雑して乗るまでに10分以上かかることがある。
 
そして、その日はちょっと寝坊してしまったから、いつもよりも急いでいた。
エレベーターの下へ降りるボタンを押しながら、来てくれと頭の中で必死に祈る。
 
すぐにエレベーターが来てドアが開く。
 
やったと思ったのも束の間、既にエレベーターの中には4人が入っていた。
ヤバいなと思いながらも、エレベーターの中に入ると、ビーッと音が鳴る。
定員オーバーだ。
 
本当に運が悪い。
 
俺は仕方なく、エレベーターを諦め、階段で降りることにした。
朝から、かなり疲れるが仕方ない。
下手をすればここから10分以上待たされる可能性もある。
 
階段を駆け下りていく。
そして、3階ほど駆け下りたときだった。
 
いきなり、ドンという音がして、マンション全体が揺れたような気がした。
 
1階まで降りたとき、まさに大騒ぎだった。
 
どうやらエレベーターが落ちたらしい。
ワイヤーが切れて一気に落下したのだ。
 
後で聞いたのだが、エレベーターに乗っていた5人全員が死亡したらしい。
 
結局、その日の会社は遅刻してしまったが、あのときもしエレベーターに乗れてたと思うとゾッとする。
 
亡くなった方には悪いが、定員いっぱいでよかった。
 
終わり

■解説

語り部が乗ろうとしたとき、エレベーター内には4人しかいなかったはずである。
だが、『5人』が死亡している。
ということは、エレベーターの上に誰かがいたということになる。
一体、その人間はエレベーターの上で何をしていたのだろうか。
もしかすると、その人間がワイヤーを切ったのかもしれない。

 

脳死

息子が事故を起こした。
単独事故で、他に被害者が出なかったのは不幸中の幸いだった。
 
息子は一命を取り留めたが、脳に損傷を受けたとのことで植物人間になってしまった。
打ち所が悪かっただけ。
何も言われないと、ただただ寝ているだけのように見える。
 
それくらい、息子の体には怪我一つなかった。
 
息子はまだ20歳になったばかり。
人生はまだまだこれからだったのに。
 
高校のときはバスケ部で、県大会で3位にも入ったくらいだ。
あんなに元気で、優しい子がこんなことになるなんて。
 
私は毎日のように病院に通って、息子に語り掛けた。
色々調べてみたところ、根気よく話しかければ目覚める可能性があるらしい。
 
それは本当に低い確率らしいけど、私はどうしても諦めることができなかった。
毎日毎日、朝一番で病院に行き、面会時間が終わるまで息子に語り掛ける。
 
だけど、1ヶ月ほどがたった頃だった。
いつものように、病院に行くと、息子が病室にいない。
すぐに医師にどういうことかと問い詰める。
 
すると、息子は昨日の深夜に急に容体が悪くなり、死んだのだという。
どうして連絡してくれなかったのかと言うと、緊急でそれどころではなかったらしい。
 
なぜ、急に容体が変わってしまったのか。
今は、司法解剖に回して原因を調べているのだという。
 
息子の体を勝手に解剖するなんておかしいと抗議したが、司法解剖は遺族の承諾を得られなくても行えるらしく、また、断ることもできないらしい。
 
息子の死因の原因がわかるのならと、無理やり自分を納得させる。
 
それから1週間後、息子の遺体が返ってきた。
大きな手術の痕があり、身体も随分と軽い。
 
そんな息子の体を見ると自然と涙が流れてくる。
しかも、結局は死因の原因はわからなかったらしい。
 
私は絶望のまま、息子の葬儀を行い、火葬して骨を拾った。
 
終わり。

■解説

司法解剖の必要性の有無は捜査を担当する検察や警察が判断するものである。
医師が判断するものではない。
また、返ってきた息子の体は軽くなっていた。
つまり、この病院の医師はまだ健康な語り部の息子の内臓を取って売り飛ばしていたと考えられる。
さらに、容体が悪化して死んだというのも嘘で、医師が『殺した』可能性も高い。

 

マンションのお兄さん

私はマンションの5階に、家族と一緒に住んでいる。
5年前、父が家を持ちたいということで、マンションの一室を購入したのだ。
 
その当時の私は小学生で、一軒家が良いと駄々をこねたものだが、高校生となった今ではここで良かったと思っている。
 
というのも、このマンションには、格好いいお兄さんが住んでいるのだ。
本当にモデルじゃないかってくらい、スラッとしてて超イケメン。
見かけた瞬間、私は一目惚れをしてしまったんだと思う。
 
でも、同じマンションの住人だからといって、仲良くなれるわけではない。
というか、基本、ほとんど会わない。
 
顔を見ることができるのは、唯一、エレベータの中だ。
下に降りるときにお兄さんが乗ってくるときがある。
お兄さんと一緒に乗り合わせたときは、思わずガッツボーズしてしまう。
 
ただ、乗り合わせたからと言っても「こんにちは」とか挨拶するのが関の山。
あとはひたすら、お兄さんをチラチラ見ることくらいしかできない。
 
もう少し、仲良くなりたいなと悶々としているときだった。
 
あるとき、20時くらいにマンションに着き、エレベータのボタンを押す。
そして、ドアが開いたとき、エレベータにお兄さんが乗っていた。
私は「ラッキー」と思いながら、5階のボタンを押した。
 
「今帰りなの?」
 
突然、お兄さんが話しかけてくれた。
 
「あ、はい。部活で遅くなっちゃって……」
「へー。こんな時間まで練習なんだ?」
「大会が近くて……」
「何の部活?」
「バスケ部です」
「ホント!? 偶然! 俺もバスケ部だったんだよ」
「ホントですか!?」
 
その後、少しだけバスケの話で盛り上がった。
だけど、すぐにエレベータは5階到着してしまう。
 
「またね」
 
降りるとき、お兄さんは笑って手を振ってくれた。
 
「やったーー!」
 
私は思わず叫んでジャンプしてしまった。
 
終わり。

■解説

語り部はマンションに帰ってきて、エレベータのボタンを押している。
つまり、1階から乗ったことになる。
そして、お兄さんは『既にエレベータ』に乗っていた。
その後、お兄さんは降りずに、語り部と一緒にエレベータ乗り続けている。
さらに、お兄さんは語り部よりも『下の階に住んでいる』はずなのに、語り部の方を見送っている。
1階でも降りず、5階以上に上るという謎の行動をしているお兄さんは、一体、何をしているのだろうか。

 

強盗

その日は友達の結婚式の2次会でかなり泥酔していた。
 
友人たちからはホテルかどこかに泊まっていけばいいと言われたが、家で落ち着いて寝たいと思って、帰ることにしたのだ。
さすがに電車は動いてなかったので、タクシーを使って家に帰った。
 
こんなに飲んだのは久しぶりだ。
フラフラとしながらも、アパートの部屋のドアの前に立つ。
 
ポケットから鍵を出して差し込む。
 
しかし、刺さらない。
おかしいなと思いながら何度かガチャガチャと鍵を差し込もうとするが一向に入らない。
 
そこで俺は思い出した。
そう言えば、会社で社員証をポケットから出すときに、鍵や財布を一旦、机の上に置いていたことを。
 
考えてみるとそれから鍵をポケットに戻した記憶がない。
ということは鍵は会社に置きっぱなしということだ。
 
仕方がない。
 
俺はこういう時のために、部屋の窓の鍵を開けている。
そこで俺は窓を開けて部屋に入った。
 
まずは酔いを冷まそうとキッチンへと向かう。
するとそこには男が包丁を持って立っていた。
 
俺は大声を出そうとしたが、男は包丁を持ったままこっちに突っ込んできて、俺の腹を突き刺した。
 
くそ。
どうやら、人が出かけていることをいいことに強盗に入られていたようだ。
問答無用で刺してくるなんて……。
 
俺は薄れゆく意識の中、やっぱりホテルにでも泊まればよかったと後悔したのだった。
 
終わり。

■解説

語り部は一度、鍵を出して鍵を開けようとしていた。
つまり、語り部は『鍵を会社に忘れたわけではなく、持っている』ことになる。
(語り部は泥酔しているせいで、そのあたりの記憶もごちゃごちゃになっている)
では、なぜ、鍵は開かなかったのか。
語り部は泥酔して違う家のドアを開けようとしたのではないだろうか。
語り部はその家の住人に『強盗』と間違われて刺されたことになる。
(実際、語り部は窓から家の中に侵入するという怪しい行動を取っている)

 

登山

俺は山登りが好きだ。
高校の時に登った山の、頂上からの景色に感動して登山にハマった。
 
大学に入ってからも登山するサークルに入って、色々な山に登った。
もちろん、サークル外でも一人で登山していたくらいだ。
友達からは大学にいる時間よりも山の中にいる時間の方が長いと揶揄われたものだ。
 
社会人になってからも登山の趣味は続き、休みを利用して山に登っている。
 
ただ、このご時世からなのか、あまり周りには登山が好きな人がおらず、結局一人で登っている。
 
そして、今年もお盆に長い休みを貰えたので山に登る計画を立てた。
親からはたまには山じゃなく実家に来いと言われているが、今はまだ登山を優先したい。
 
待ちに待った登山の日。
俺は順調に山を登っていく。
 
だが、不意に山の天気が荒れ、雨が降り出してきた。
俺は岩陰に入り雨をやり過ごす。
 
雨が止んだすきを見て、先へと進む。
だが、雨のせいで俺は足を滑られて、斜面を滑り落ちてしまった。
 
幸い、命に関わるような怪我はなかったが、足を怪我してしまったため動けなくなった。
 
なんとか救助を待つしかない。
 
結構、非常食を持ってきていたので、数日は餓死する心配はないだろう。
しかし、待っても救助が来ない。
 
親にはこの山に登るとは伝えてあるから、救助の連絡はしてくれるはずだ。
それから3日が過ぎた。
 
上空では何台かヘリが通っているのが見える。
俺は大声で手を振ってみるが、こっちに気づきそうにない。
 
俺は力を振り絞って、木でSOSを作る。
だが、それでも見つけてもらえなかった。
 
それから3週間が経った頃だ。
俺は偶然通りかかった登山者に見つけてもらえた。
 
すぐに山岳救助隊が呼ばれ、俺はようやく山を降り、親の元へ帰ることができたのだった。 
 
終わり。

■解説

語り部が山で遭難してから、発見されるまで1ヶ月近くは経っている。
そして、非常食は『数日分』しかない。
つまり、語り部は『死体』となって山を降り、幽霊となって親の元へと帰ったことになる。

 

監視の目

私は昔から母親の監視がすごかった。
 
小中高と部活に入ることや、友達の家に泊まりに行くなんてことは許して貰えなかった。
 
学校が終わったら、すぐに帰って来なさい。
そう言われて育ってきた。
 
中学生まではそれが普通だと思い込んでいたが、高校になれば周りと全然違うことに気づき、何度か抵抗もした。
だけど、未成年のうちはうちの教育方針を変える気はないと突っぱねられてしまった。
 
つまり、私はずっと母親の監視の目の中、生きてきたのだ。
 
そこで私は高校生活を諦め、大学生活に全てをかけた。
必死に勉強に打ち込み、有名大学を目指した。
 
そこに受かれば、家から通うことは無理。
ということは、必然的に一人暮らしができるというわけだ。
 
必死の勉強の甲斐もあり、私は無事、念願の大学受験に成功した。
最初、母は近場の大学に行くことを進めてきたが、さすがに父に説得もされてついに母は折れた。
18にもなれば、もう成人だ。
 
私は晴れて一人暮らしを満喫できる環境を手に入れた。
 
だけど、現実というのはそうそう上手くいかない。
大学でサークルに入り、友達と遊ぶ生活を続けていく中で、ある異変を感じた。
 
それは家にいるときでも監視の目を感じることだ。
 
長年、母の監視に晒されていた私だからこそわかる感覚だと思う。
注意深く観察すると、微妙に部屋の中の物の位置がズレている感じもする。
 
ストーカー。
 
真っ先に浮かんだのがその言葉だった。
 
私は誰にも言わずに引っ越しを決めた。
これで監視の目から離れられる。
 
だけど、その期待はすぐに裏切られることになる。
新しい家でも、監視の目の感覚は消えない。
 
かといって、こんな状態で警察に相談しても門前払いだろう。 
 
だから私はサークルの、女性の先輩に相談してみた。
その先輩も、昔、ストーカー被害にあったらしく、その辺りの対処法には慣れているらしい。
 
さっそく、先輩に家に来てもらうことになった。
真夏の暑い中、嫌な顔一つ見せずに来てくれた。
 
「ごめん。さっそくだけど、喉乾いたからコーラ貰っていい?」
「はい。どうぞ」
 
汗だくの先輩は冷蔵庫に向かっていった。
私は部屋のエアコンの温度を少し下げる。
 
すると先輩は私の分までよそってくれていて、私に差し出してくれた。
 
「ありがとうございます」
「うん。じゃあ、早速始めようか」
 
先輩はコーラを飲み干した後、盗聴器がないかを調べる機械で家の中を見てくれる。
だけど、それらしいものは見つからなかった。
 
ガッカリする私に、先輩は「戸締りをしっかりすることと、男がいるように見せかける」方法を教えてくれた。
それで多少はストーカー対策になるらしい。
 
そして、先輩は頻繁に家に遊びに来てくれると言ってくれた。
本当に面倒見のいい先輩だ。
サークル内でも、みんなに人気があるのだ。
 
頼りになる先輩が頻繁に来てくれるならもう大丈夫だろう。
 
今日からは安心して寝ることができそうだ。
 
終わり。

■解説

先輩はなぜ、語り部の家に『コーラがあることを知っている』のだろうか。
もしかすると、先輩が監視(ストーカー)しているのかもしれない。

 

花火大会

俺は昔、ちょっとしたことをして結構な額のお金を手に入れた。
そのおかげで、マンションの5階にある部屋を購入できたのだ。
 
夏になると部屋から花火がよく見えるため、時期になるとよく友達が集まってくる。
俺の部屋で花火を見ながら酒を飲んで、昔話をする。
これがなによりの楽しみだった。
 
今年も花火の時期がやってきた。
昔の友達が、酒を持って集まって来る。
 
俺たちはまだ夕方だったが、酒を飲み始めた。
花火が始まることには、良い感じで出来上がっていた。
 
そして、花火の始まりを告げる、一発の花火が上がる。
そこから、次々に花火が上がっていく。
 
「さてと、そろそろいくか」
 
友達の一人が立ち上がってそう言うと、みんなが「そうだな」と頷く。
 
友達が窓を開け、外に出て行く。
俺は家を出る前に、電気を消し、ドアにカギをかけるために玄関に向かう。
 
「お前も早く来いよ」
「ああ、すぐいく」
 
準備を終えて、俺は友達に続き、窓から外へ出た。
 
終わり。

■解説

語り部の家は5階にある。
いつも部屋から花火を見ているということは、ベランダなどもないと思われる。
それなのに、窓から外に出るとどうなるのか?
つまり、友達は部屋から外に出て、集団自殺したということになる。
多額のお金を手に入れた際に何かをして、そのことで自殺を決めたのかもしれない。

 

空き巣に入られた部屋

不景気のせいで、失業者が増える。
その失業者が生きていくために犯罪を犯す。
こんな世の中じゃなかったら、犯罪なんてしなかったという人間は多いのではないだろうか。
 
ただ、こんなのは犯罪者側からの詭弁だろう。
同じ状況でも犯罪に走らない人はいる。
犯罪に走る人間は精神的に弱いということは否定できないはずだ。
 
起きる犯罪としては空き巣や万引きなどが多くなっていくのだろう。
 
俺の周りの家でも空き巣が増えている。
本当に多い。
結構、頻繁に警察が来ていたりしている。
 
俺の家は幸いなことに空き巣には入られていない。
だが、油断は禁物だ。
 
この部屋はかなり空き巣に気を使っている。
もちろん、窓にはすべて鍵をかけ、玄関の鍵も厳重なものにしているのだ。
 
だけど、残念なことに空き巣側の技術も上がっているというのが現状だ。
どんなに厳重にしていても、数秒で家に入られてしまう。
しかも時間は夜も昼もない。
 
徹底的に調べ上げられて、家に誰もいないところを見計らって空き巣に入るのだ。
 
その日の昼間。
俺は玄関の鍵を開けて、その部屋に入る。
 
だが、一瞬で違和感に気づいた。
 
部屋が荒らされている。
空き巣に入られたのだ。
 
くそ! くそ! くそ!
 
俺は怒りと悔しさに地団駄を踏んだ。
あれだけ、しっかりと準備していたのに。
 
だが、空き巣に入られてしまったことはどうしようもない。
 
俺はそのまま部屋に鍵を閉めて、逃げ出した。
 
終わり。

■解説

語り部も空き巣犯である。
狙っていた部屋が先に空き巣に入られて悔しがっている。
 
語り部は空き巣として狙っていた部屋のことを「あの部屋」や「この部屋」と言っている。
 
また、自分の周りに空き巣が多いのは、語り部が空き巣に入っているからである。
手口を知っているから、自分の家には入られていないわけである。

 

お化け屋敷

俺には今、付き合い始めた彼女がいる。
付き合い始めたと言っても、もう3ヶ月になる。
 
でも、なにも進展がない。
毎週デートとかもしてるのに、手も繋げていない。
 
周りからは小学生か?と煽られたりもする。
 
悔しいけど俺だってそう思う。
中学生だって、もっと進んでるはずだ。
 
だからといって強引に行くわけにはいかない。
だって、彼女は長年誘い続けて、ようやく付き合うところまでこぎ着けたんだから。
嫌われたくない。
でも、このままというのも、耐えられない。
 
そこで俺は友達の助言も得て、ある作戦を立てた。
 
お化け屋敷。
 
暗い中、2人で進む。
怖いという状況がつり橋効果を得られるし、何より自然と手を繋げる。
もしかしたら、抱き着かれることだってあるかもしれない。
 
一度、そうなれば、次は自然と手を繋げたり、抱きしめたりできるようになる。
友達はそう言っていた。
だから、俺は彼女と一緒にお化け屋敷に行くことにしたのだ。
 
本当は心霊スポットとかにしようと思ったのだが、彼女は霊感が高いらしくて、そういう場所は嫌がられたのだ。
 
そして、当日。
彼女と一緒に錆びれた遊園地にあるお化け屋敷に入った。
 
入った瞬間、彼女は俺の腕に抱き着いてきた。
すぐに出ようと言ってくる。
本当に、怖がっているようだ。
 
これは効果がありそうだ。
俺は「一回入っちゃったから、戻れないよ」と説得しつつ、ゆっくりと進む。
彼女はドンドン俺に密着してくる。
 
最高だ。
なんなら、1時間くらいここにいたいくらいだ。
 
そのとき、彼女は大きな悲鳴を上げた。
少しびっくりしたけど、彼女の悲鳴も初めて聞いたから、何となく新鮮だった。
 
俺は気を紛らわせるように「ビビり過ぎだって。大丈夫。俺がいるんだからさ」と言ってあげた。
 
すると彼女は怖がっていたことを恥ずかしく思ったのか、悲鳴を上げなくなった。
密着もしなくなり、ただ、手を繋いで歩くだけになってしまった。
 
しまった。
落ち着かれてしまった。
もう少し怖がって欲しかったんだけど。
 
でも、大丈夫。
彼女は無理をしているだけだ。
 
なぜなら、彼女の手は緊張と怖さで冷たくなっているからだ。
 
終わり。

■解説

悲鳴を上げてから、彼女は幽霊と入れ替わったか、とり憑かれてしまった。

 

連続殺人事件

最近、近所で連続殺人事件が起きている。
被害者の性別、年齢、体格、経歴を見る限り、共通性が全くないことから、無差別殺人だと考えられているようだ。
 
ということは、俺もいつ狙われるかわからない。
注意するにこしたことはないだろう。
 
とはいえ、仕事の関係で終電ギリギリに帰ってくることも少なくない。
その時間になると、事件の影響もあり、外を歩いている人は全くいない。
 
こんな状況で一人で歩いていれば、格好の標的だと言えるだろう。
 
だけど、幸いなことに、俺はこうして狙われることなく普通に生活できている。
本当なら、こんなことを心配することもないほど治安がいい場所だったんだけど。
早く、犯人が捕まってほしい。
 
だが、その思いも虚しく、事件は難航しているらしい。
昨日、20代の女性が殺害されたとニュースでやっていた。
警察の見解では、例の連続殺人事件の犯人の仕業とのことだ。
 
いや、違うって。
しっかりしろよ。
 
俺はため息交じりでテレビを消した。

■解説

語り部は20代の女性がなぜ、例の殺人犯の仕業じゃないと知っているのだろうか。
つまり、この地域には犯罪者が2人いる。

 

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