サイトアイコン 意味が分かると怖い話【解説付き】

意味が分かると怖い話 解説付き Part311~320

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裏切者

その国は内乱が続いていた。
 
政府軍と革命軍で争いが5年以上も続いている。
最初は政府軍が断然有利だったが、次第に革命軍が盛り返して来ていた。
 
男は政府軍に所属し、国のためと思い兵に志願して戦っている。
 
そんなあるとき、軍の上層部から兵士の中に敵と内通している者がいるという報告を受けた。
男は上層部に信頼があり、身元もしっかりと調べ上げられたうえで、内通している裏切者を探し出すように命令されていた。
 
そこで男は情報を巧みに操作し、ある作戦での撤退の場所に関して偽の情報を流した。
裏切者であれば、A地点ではなくB地点に向かうはずである。
 
そして、男は作戦を実行に移す。
部隊に撤退するように命令が下ったという。
部隊の隊員たちは一斉に、撤退場所へと向かっていく。
 
男は注意深く隊員たちを見る。
 
「さて、誰が隊列を乱すのか?」
 
すると男は他の隊員たちから「隊列を乱すな」と注意された。
 
終わり。

解説

他の隊員から「隊列を乱すな」と注意されたということは、隊列を乱したのは男だけだということになる。
つまり、男以外全員が裏切者だということになるのだ。

 

悪魔との契約

男は証拠こそ掴めなかったが、妻が浮気していたと確信している。
浮気相手は双子の兄だ。
 
関係を終わりにしようとした矢先、妻は妊娠してしまう。
一縷の望みを持って、その子供は自分の子だと信じて、男は離婚するのを止めた。
 
だが、その子が成長するにしたがって、男はこの子供が自分の子供ではなく、兄の子供だと確信する。
自分に懐かず、兄の方に懐く子供。
 
兄の言うことは素直に従うのに、自分の言うことは疑ってかかる。
妻も、自分よりも兄と一緒にいるときの方が、笑顔が多く、楽しそうだ。
 
男の我慢の限界は近かった。
そんなあるとき、子供が、自分より兄の方の子供として生まれたかったと言われる。
その言葉に男の中で何かが切れた。
 
そして男は子供を殺してしまう。
さらに、その場面を見た妻が男をなじったため、男は妻をも殺してしまった。
 
こうなったら、兄も。
そう考えた男は兄の元へと向かう。
 
だが、妻と子供を殺したことを兄が知ったため、兄は行方をくらませてしまった。
 
男は警察から逃れながらも、必死になって兄を探した。
全ての元凶である兄を殺すまでは死んでも死にきれない。
男は憑りつかれたように、ひたすら兄を探し続ける。
 
10年が過ぎても兄が見つからない。
だが、10年経っても男の兄への憎しみは消えていなかった。
 
そんな中、男は悪魔を呼び出す方法を聞き、試してみる。
すると運よく、悪魔を呼び出すことに成功した。
 
男は悪魔に願い出る。
 
「妻と寝て、子供の父親である、すべての元凶であるあの男を、3日3晩の間、地獄の苦しみを与えた後に殺してくれ」と。
 
男はその願いのためなら残りの人生のすべてを捧げると約束する。
 
悪魔との契約は完了した。
 
すると突然、男は胸を抑えて苦しみ出す。
男は3日間苦しんだあと、絶命した。
 
終わり。

解説

妻と寝て、子供の父親で、全ての元凶の男を苦しめた後に殺してくれと願った男。
だが、苦しんだのは男自身。
つまり、妻は浮気などしていなかった。
子供も自分の子供だった。
 
男が疑心暗鬼だったため、妻と子供は男と一緒にいるのが苦痛だったと考えられる。
すべては男の妄想であり、勝手な決めつけで、自分の妻と子供を殺したことになる。

 

燃えるゴミ

女は男と暮らしていた。
若気のノリで付き合ったため、今では二人の間は冷めきっていて、男は女に暴力を振るうようになっている。
 
女は男に愛想をつかしていたが、出て行こうとすると男が抵抗するのでなかなか出て行くことができなかった。
 
そんな中、男が1日、家を空けると知り、出て行く準備をした。
1日で新しい住居を探すのはかなり大変だったが、やっと訪れたチャンスを逃すまいと頑張った。
 
立つ鳥跡を濁さず。
 
女は全てのゴミを処分した。
綺麗さっぱりと全てをリセットして出て行きたかったのだ。
なので、今、持っている物は全て捨て、引っ越し先で新しい物を揃えるつもりだった。
 
家具や電化製品など売れるものは売ってしまい、残った粗大ゴミなどすべてのゴミは業者に持っていって貰った。
家の中のゴミをすべて処分し、満足感に浸る女。
 
そして、家を出て行こうとしたときだった。
突然、男が帰宅してくる。
 
なんと予定が中止になったとのことだ。
家の中を見て、激怒した男は女を殴りつけ、二度と出て行けないように監禁してやると言い出した。
 
次の日。
女が1つの大きなゴミ袋を持って出てくる。
 
ゴミ取集所を見ると、今日は燃えるゴミの日だった。
 
「ちょうどよかった」
 
女はゴミ袋を収集所へ置き、軽い足取りで駅へと向かった。
 
終わり。

解説

女は男を『生ごみ』にして、捨てて家を出て行った。

 

マタギ

男は現在ではとても少なくなったマタギである。
様々な知識を持ち、初めて入った森の中でも、すぐに自分の庭のように把握できてしまう。
 
昔はその世界に関係する人間であれば、男の名を知らない者はいなかったほどだった。
 
何人かは興味本位で、男に教えを乞う者もいたが、男にとってマタギは人生そのものだったため、生半可な覚悟の人間には教える気はなかった。
 
だが、そんな男も年を取り、引退を考える。
そうなると一人くらいは弟子を取るべきだったかと後悔もしたが、これも時代の流れなのだろうと諦めた。
 
山に育てられ、山と共に生きてきた人生。
男は自分の死期を感じ、山の中で朽ちようと考えて、山籠もりの準備を始める。
 
だが、そんなとき、遠くの小さな村で獣害被害があったと相談された。
一夜にして村人17人全員がクマによって殺されたのだという。
 
猟友会のメンバーがことに当たったが、既に一人が犠牲になっているとのことだった。
 
そのクマを是非、男に仕留めて欲しいとの話だ。
 
男はそれを最後の仕事と決め、受けることにした。
 
男は山に入り、クマを探す。
クマを撃つのは実に10年ぶりくらいだった。
 
そのことに少し興奮して血が熱くなるのを感じたが、諫めて先へと進んでいく。
 
するとすぐに男はクマを見つけ出すことができる。
それはとても巨大なヒグマだった。
 
男はクマの正面に立ち、臆することなく狙いを定める。
今までこんな大きなクマに遭遇したことはなかった。
 
最後の仕事として十分な獲物だと、男は神に感謝する。
 
そしてクマは男に襲い掛かろうとする。
その瞬間、男はクマの眉間を見事に撃ち抜くことに成功した。
クマは倒れ、動かなくなる。
 
一発で仕留められたことに、男はまだまだ自分も現役で通用するなと思いながら、山を下っていく。
 
数日後。
男は山の中で死体として発見される。
それはクマによって引き裂かれた無残な死体であった。
 
終わり。

解説

人食いクマは男が仕留めた以外にも、もう1体いた。
男は1体を仕留めたことで気が緩み、油断したところを襲われた可能性が高い。

 

テレワーク

夫がテレワークになった。
 
なんでこのタイミングかと聞いてみると、前々から話が上がっていて、ようやく上層部が折れてテレワークが開始されたということらしい。
社員のほとんどがテレワークになり、総務の夫も無事にテレワークになったのだそうだ。
 
夫はテレワークが始まる前は逆に家にほとんどいない状態が続いていた。
朝早く出て行って、終電で帰ってくるという毎日で、体を壊さないか心配だった。
 
それがテレワークになると、ずっと家にいるという状態がなんだか信じられないくらいだ。
  
朝9時から部屋にこもり、昼食を食べるために1時間部屋から出てきて、また19時まで部屋にこもるという生活を、夫は送っている。
通勤時間がなく、その時間が丸々空いたと喜んでいる顔を見ると私も嬉しくなった。
 
うちにはまだ小さい子供もいて、出勤していたときはほとんど子供の面倒を見てくれなかった夫だが、テレワークが始まると結構、子供の面倒を見てくれるようになった。
 
ミーティングがあると言ってるときはダメだが、それ以外の時間は子供が部屋に入っても怒ったりはしない。
なんだか、性格も結婚前の穏やかなときに戻ったみたいだ。
 
子供をお風呂に入れたり、料理や後片付けを手伝ってくれたりするようになった夫。
 
なんだか、新婚当初を思い出す。
 
世間ではテレワークになったら、夫婦の関係が悪くなるなんて話を良く聞くが、うちはむしろその逆だ。
 
夫がテレワークになって、本当によかったと思う。
 
終わり。

解説

語り部は、ほぼ毎日、定時の時間だけ働いているように言っている。
以前は朝早くから出て行って終電に帰っていたのにテレワークになったからと言って、残業時間がいきなり軽減されるのは少々おかしい。
また、総務はテレワークが難しい職種だと言われている。
つまり、語り部の夫はテレワークなのではなく、無職の状態で家にいる可能性が高い。
子供の面倒や家事手伝いをしているのは、後ろめたさからなのかもしれない。

 

皆既日食

この時代でも、未だに未接触部族が存在する。
そういう部族は大体が排他的で暴力的なことが多い。
 
男が接触を試みている部族も、今まで一度も接触に成功した事例がなかった。
というより、接触を試みて、帰ってきた人間はいない。
 
それでも男はその部族の神秘的な儀式に魅入られ、なんとか接触を図ろうと機会を伺っていた。
 
いつも遠くから双眼鏡で儀式を見るだけでは物足りなく、やはり直接、近くで見たいと思っているのだ。
 
遠くからこの部族を観察している男は、その部族が言葉ではなく、身振りで大部分のコミュニケーションを取っていることに気づく。
さらに、100年前のその部族の文献が見つかり、研究することで部族の理解が進んだ。
 
遠くから双眼鏡で様子を見ていると、どんなコミュニケーションを取っているのかがわかるほどになった。
 
そして、男は文献を見て、あるチャンスを待っていた。
 
皆既日食。
 
その部族は太陽を神と讃えているのだという。
その太陽が月に覆われる皆既日食は、最大の接触のチャンスだと書かれていた。
 
男は待った。
それから5年ほど待ち、ついに長年待ち続けた皆既日食の日がやってくる。
 
男は皆既日食が起こる時間を見計らって、その部族に接触した。
 
男は部族捕まり、村の中心に連れていかれる。
普通であれば、外界の人間は例外なく殺される。
 
しかし、男には皆既日食のことがある。
 
男は部族に「自分は悪魔の使いだ。太陽(神)を隠すことができる」と伝えた。
 
部族の人間たちは大いにざわついていた。
 
どうやら、悪魔の使いの再来だと騒いでいるようだ。
 
これなら信じてもらえそうだ。
そう考えていると、空では皆既日食が始まった。
 
終わり。

解説

この部族の人間は悪魔の使いの『再来』と言っている。
ということは、100年前に文献を残した人間は、皆既日食の際に部族に接触していると考えられる。
文献を残した人間は、男と同じように「自分は悪魔の使いで太陽を隠せる」と言っている可能性が高い。
しかし、この部族に接触を試みて、帰ってきた人間はいないはずである。
つまり、文献を残した人間は、『生きて帰ってきていない』ことになる。
 
この後、男も100年前に文献を残した人間と同じ運命を辿ることになるはず。
部族は悪魔の使いを殺すことで、太陽が復活すると思い込んでいる可能性がある。

 

コウノトリ

「赤ちゃんって、どうやってできるの?」
 
子供にそう聞かれたとき、母親ならどう答えるのが正解なんだろうか。
聞いてきたのは6歳の娘だ。
 
まだ、性教育を教えるのは早過ぎる。
たぶん、教えたところで理解もできないだろう。
 
そうなったとき、昔の人はいい理由を考え付いたものだと思う。
 
「コウノトリが運んで来るんだよ」
 
今回はこれを使わせてもらうことにする。
 
「トリさんが運んで来るの?」
「そうよ。素敵だよね」
「私もトリさんが運んで来てくれたの?」
「うん。そうよ」
「じゃあ、私、トリさんにお願いしよっと」
「え?」
「私ね、妹欲しいの」
「……そっか」
 
娘のこの言葉が関係したわけじゃないと思うが、私はそれからすぐに妊娠した。
日に日に大きくなる、私のお腹を不思議そうに見ている娘。
赤ちゃんはコウノトリが運んで来ると言った手前、娘には妊娠のことは説明していない。
 
お腹に赤ちゃんがいるなら、コウノトリが運んで来ることは嘘になってしまう。
今も、娘は毎日部屋でお願いをしているみたいだ。
 
そして、ついに子供が生まれた。
生まれたのは男の子。
娘がお願いしてたのは妹だけど、きっと喜んでくれるだろう。
 
「コウノトリが運んで来てくれたわよ」
 
私は娘に赤ちゃんを見せると、大はしゃぎで喜んでくれた。
 
それからは私も夫も、新しく生まれた息子につきっきりになる。
娘が前以上に「遊んで」とせがんできたけど、我慢してもらう。
 
赤ちゃんの面倒を見ながら、娘と遊ぶなんて体力はない。
 
日に日に娘は不機嫌になっていく。
でも、いつか、きっとわかってくれるはず。
私はそう信じていた。
 
そんなある日、私は疲れてしまって、ソファーで寝てしまった。
赤ちゃんはお昼寝してるので、静かだったということと疲れもあったせいか熟睡してしまったのだ。
 
外からやたらとカラスの鳴き声が聞こえてくる。
るさくて目を覚ます。
既に夕方になっていた。
赤ちゃんはとっくに起きてるはずだ。
私は慌てて赤ちゃんを寝かせていた部屋に行く。
 
すると赤ちゃんの姿はなかった。
混乱した私は娘に「赤ちゃん、どこに行ったか知らない?」と聞いた。
 
すると娘はこう答えた。
 
「トリさんに戻してきたよ」
 
終わり。

解説

娘はコウノトリがどういう鳥かはわかっていない。
それはずっと「トリ」としか言っていないことからわかる。
そして、語り部が寝ていた時に、『カラスの鳴き声』で目を覚ましている。
つまり、娘が言っている「トリに返した」というのはカラスがいるところに置いた可能性が高い。
また、カラスは人を襲うことがある。
語り部が目を覚ますくらい鳴いているということはかなりの興奮状態だと考えられる。
赤ちゃんが無事だという可能性はかなり低いだろう。

 

コイン収集が趣味の友達

僕の友達に色々な国のコインを集めるのが趣味という男の子がいる。
その子のお父さんが貿易の会社に勤めてるとかで、色々な国のコインが手に入るのだそうだ。
 
よくその子に、コインを自慢されるのだが、正直それが良い物か悪い物かがわからない。
欲しいとも思わないけど、とにかく「凄い!」と言っておくことにしてる。
 
前に一回、「変なコインだね」と言った時に、物凄く不機嫌になっちゃって、2日くらい口をきいてくれなかった。
だから、とにかくコインを見せられたら「凄いな」「いいな」というようにしているのだ。
そうすれば、その子は凄く機嫌がよくなるし。
 
そして、その子にはもう一つ趣味というか好きな遊びがある。
コイントスっていうやつだ。
 
コインを飛ばして、表か裏かを当てるゲーム。
 
何かあったら、その子は持っているコインでコイントスをする。
そして、その子は凄くコイントスが強い。
僕は一回もその子に勝てたことがないのだ。
 
前に何かズルをしてるんじゃないかって疑ったんだけど、「それならお前がやってみろよ」と言われて、僕がコインを飛ばす方をやってみたんだけど、それでもやっぱり勝てない。
 
今日も学校の帰り道、その子に「負けた方がジュースを奢る」ということで、勝負しようと言われた。
いつも負ける僕は断ろうとする。
だけど、「俺が負けたらジュースにお菓子も付ける。それでどうだ?」と言われた。
買ったら、ジュースだけじゃなくてお菓子も奢ってもらえる。
 
僕はその勝負に乗ることにした。
その子がコインを飛ばす。
僕は悩みに悩んだ後、「裏」に決めた。
 
その子はパッと手を離す。
僕たちはその子の手の上のコインを見る。
 
「……どっち?」
「残念、表だ」
「あー、もう! また負けた」
 
仕方なく、僕はその子にジュースを奢る。
 
本当にコイントスが強いなぁ。
でも、いつか、絶対に買って見せるんだ。
 
終わり。

解説

語り部は「見たことのないコイン」でコイントスをしているので、どっちが表か裏かわからない。
つまり、その子は、「本当は裏」なのに「表」と嘘をついている可能性が高い。
語り部はこの先、その子にコイントスで勝てることはないだろう。

 

大人気のゲーム

大学の先輩から、バイトをしないかと声をかけられた。
 
内容はある大人気のゲームをプレイするといったものらしい。
たぶん、ゲームのテストプレイか何かだろう。
 
報酬は3日間で3万円。
 
つまり1日で1万だ。
パッと聞いたときは割りが良さそうだと思ったけど、1日、12時間以上はプレイをやることになるから、時給にすると結構低かったりする。
 
だけど、作業内容によっては追加で報奨金が出るらしい。
しかも、その金額は結構高いようで、大体の参加者はその金額に驚くという話だ。
 
きっとそのゲームに関しての改善案とかを出すとかバグをたくさん見つけるともらえるのだろう。
ゲーム会社に勤めている知り合いから、バイトのデバッカーの質が低いと言う愚痴を聞いたことがある。
こんなふうに出来高にすることで、バイトのやる気を高めて質を高くしようという意図があるのかもしれない。
 
さらに先輩は、ゲーム好きで一人暮らしをしていて他にバイトをしていない人を探していて、それにピッタリと合うのが俺しかいなかったらしい。
だから、是非とも受けて欲しいと頼まれた。
 
ゲーム好きで欲しいゲームもあった俺はそのバイトを受けることにした。
 
当日。
集合場所には20人ほどの人たちが集まっていた。
しかも男女はもちろん、年齢の幅もかなり広かった。
高校生くらいの人もいれば、60歳くらいの人もいる。
 
そんな中で共通しているのが、みんなゲーム好きというところだ。
 
それはそうだろう。
3日間、缶詰でゲームをするというのだから、ゲーム好き以外はやろうとは思わないだろう。
 
他の参加者と雑談をしていると、バスがやってきた。
これから現場に向かうのだという。
 
バスに乗ると、すぐに窓がカーテンで仕切られた。
 
なんだろう?と思って警戒したが、すぐに車内のモニターに映画が流れ始める。
どうやら、参加者たちが暇にならないための配慮だろう。
映画自体は興味がなかったが、その配慮が結構、嬉しかった。
 
これならきっと現場でも快適に過ごせそうだ。
 
ゲーム好きは結構、陰キャと思われがちだが、中にはちゃんと陽キャのゲーム好きもいる。
俺もどちらかというと陽キャの方だ。
 
参加者の席を回って、色々と話をしてみる。
3日間とはいえ、一緒にゲームをする仲間だ。
 
中には話して欲しくないっていう陰キャもいたけど、大体の人に話しかけることができた。
 
ただ、その中で気になった点があった。
 
1つは誰も「何のゲーム」をするのか知らないこと。
そういえば、俺も聞いていない。
タイトルはおろか、どんなゲームかさえも。
 
ただ、これはそのゲームがリリース前だとすれば納得できる。
リリース前のテストプレイであれば、情報が外に漏れないようにするのは当然だ。
 
そしてもう1つの方は、ちょっとだけモヤモヤした話だった。
 
それはこのバイトは定期的に行われるというものだ。
前に何回か誘われた時があり、そのときは都合が悪くて断ったが、今回ようやく参加できると話している人がいた。
 
別に定期的に行うというのは別に変じゃない。
俺が気になったのは定期的に行われるはずなのに「経験者が1人もいない」ということだ。
 
先輩は「作業内容によっては追加で報奨金が出る」と言っていた。
その金額は参加者がビックリするくらい高いとも。
 
なら、1回参加した人なら、またやりたいと思うのではないだろうか。
それに会社の方からしても、未経験よりも経験者の方が手慣れている分、扱いやすいはずだ。
 
そんなことをモヤモヤと考えているとバスが停車した。
どうやら目的地に着いたようだ。
 
時計を見ると3時間が過ぎている。
 
随分と遠いところでやるんだな。
 
そう思いながら、俺たちはバスを降りた。
大人気のゲームに胸を膨らませながら。
 
終わり。

解説

語り部たちがこれからやるゲームに関して、もし、リリースしていないゲームであるなら『大人気』というのはおかしい。
そして、リリース後のゲームであるなら、ゲームの名前を隠すことがおかしいし、そもそもデバックのために大勢の人間を3日間という短い期間で雇うというのも変である。
 
また、3時間もバスを走らせるというのも変である。
参加者によっては近い人間もいるはずなのに、全員を一つの場所に集めてから移動するというのも怪しい。
また、バスは移動の際にカーテンを閉め切って、外を見せないようにしている。
 
さらに、ゲームの内容で報奨金を出し、その金額が、参加者が驚くほどというのも、バイトの仕事としては曖昧過ぎる。
 
最後に、探している人の条件に「一人暮らし」というのも、かなり怪しい。
 
以上のことから、参加者がやることになるのは『デスゲーム』で、生き残った人間に賞金が貰えるということが考えられる。
その賞金が驚くほど高いと言うのも納得できる。
また、「経験者がいない」というのも、ゲームの内容がデスゲームであるなら、当然である。
高い金を貰えると言っても、殺し合いにもう一度参加したいと思う人間は少ないだろう。
 
そして、『大人気のゲーム』というのは、客に対して大人気ではなく、『主催者側』に大人気のゲームであると推測される。

 

未来の日記

俺は去年、うつ病になって会社を退職した。
いわゆるブラック会社ってやつだったのだ。
 
まずはしっかり体調を整えるということで、今はまだ就職活動はしていない。
働いてたときは休日もなにもない生活だった。
プライベートなんて全くと言っていいほどなかったのだ。 
なので、あと2年くらいは、こうやってゆっくり過ごしても罰は当たらないだろう。
 
とはいえ、やりたかったゲームをしたり、読みたかった漫画を読んだり、見たかったアニメを消化してしまうと、途端にやることがなくなってしまい、暇になってしまった。
 
それで、久しぶりに部屋の中を大掃除してみる。
最初は面倒で、やっぱり止めようと思ったが、掃除するたびに懐かしいものが掘り出されてきて、テンションが上がっていく。
 
小学生の時に無くしてたと思ってたキン消しやビックリマンシール。
借りたまま返してなかったファミコンやスーファミのソフト。
 
そして、高校の時に初めて買ったエロ本。
 
手に取るとあの時の思い出が一気に蘇る。
なかなか買う決心が付かなくて、本屋で3時間以上ウロウロしたこと。
懐かしくて思わず、顔が綻んでしまう。
 
そんな思い出に浸りながら押入れを掃除していると、1冊のノートが出てきた。
なんの変哲もない、普通のノートだ。
 
題名は『未来の日記』と書かれている。
全く記憶はないが、どう見ても俺の字だ。
 
そういえば、昔、こんな番組が流行ったなと思いつつ、ノートを開いてみる。
 
そこには未来のことが書いてある。
未来と言っても、その当時の俺から見た未来であって、今の俺からしてみれば過去のことが書いてあった。
 
『平成19年。〇×〇大学に入学』
 
これは大学に入学した年数も大学名も合っている。
おそらく、この未来の日記は高校の時に書いたものだろう。
だから、そのときに目指していた大学を書いたんだと思う。
年は順調にいけば、書いてある年に入学できる。
つまり、浪人しなければ当たるというわけだ。
 
『平成23年。正社員で会社に勤める』
 
まあ、これも就職浪人しなければ当たる。
しかも、会社名を書いていないのが、我ながらこざかしい。
 
『平成26年。魔法使いになる』
 
魔法使い?
なんのことだ?
と思ったら、どうやら30でもまだ童貞だと言いたいらしい。
 
うるせーよ。
合ってるよ!
まだ魔法使いだよ!
 
『平成32年。転職する』
 
残念。これは年が外れている。
俺が転職したのは令和2年だ。
 
『平成34年。ニートになる』
 
黙れ!
ニートじゃねーよ!
今は充電期間なだけだから!
 
とにかく年も内容も外れだ、外れ!
 
『平成35年。FF16がやれなくて心残り』
 
これが最後だった。
 
きっと、この辺で書くのが飽きたんだろう。
にしても、FF16って、凄いピンポイントだな。
 
なんてことを考えていると今日がFF16の発売日だということに気づく。
 
「暇だし、やってみるか」
 
俺は掃除を途中でほっぽり出して、ゲーム屋に駆け込んだ。
そのとき、頭に未来の日記のことが思い浮かび、もしかしたら「売り切れ」で悔しい思いをするのかと思ったが、そんなことはなく普通に買えた。
 
今日は徹夜でプレイしようかな。
 
俺は少しテンションが上がり、足早に家へと向かった。
 
終わり。

解説

平成32年は令和でいうと2年なので、未来の日記の内容は合っている。
また、同様に仕事を辞める時期も当てていることになる。
さらにFF16の発売の年まで完全に当てているのである。
つまり、この未来の日記に書かれている内容は実際に起こると推測される。
 
そして最後に「FF16がやれなくて心残り」と書いてあったが、語り部は無事にFF16を購入できている。
ということは、語り部は購入したのにFF16を起動(プレイ)することができないということが予想される。
 
さらに未来の日記がこの行で終わっていることも不気味である。
 
もしかすると、語り部は帰り道に事故に遭い、亡くなってしまうのかもしれない。

 

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