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タワーマンション

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本編

男は部長に昇進したことを機に、タワーマンションを購入した。
41階と、かなり上の階だ。
 
最初は家族も喜んでいたが、マンションの出入りにエレベーターを待たなくてはいけないことや、知り合いからは妬まれること、そして、高い所に住んだからといって別に得を感じないことなどで、今では家族は後悔しているという状況になっている。
 
男も正直、勢いで買ってしまったこともあり、売ろうかどうかを悩んでいる。
 
会社内や知り合いにも、タワーマンションを買ったことは内緒にすることにした。
かなりの高額で、ローンも組んでいるのでそのへんを聞かれるが鬱陶しかったのだ。
 
しかも、最近、男の妻が嫌がらせをされているらしい。
家の電話にイタズラ電話や玄関先にゴミやネズミの死体が置かれていたり、外に出ると誰かに見られているような感覚がするのだという。
そんなこともあり、妻は子供を連れて一時的に実家に戻り、今は一人で住んでいた。
 
今まで家族と一緒でにぎやかだったのに、男は一人になり、急に寂しく感じるようになる。
 
そんなある日。
男は自分を慕う、部下の女の子と飲みに行った。
そのときに、ふと、タワーマンションのことをしゃべってしまった。
すると部下の女の子は行ってみたいと言い出す。
 
男は誰にも言わないことを約束して、自宅のタワーマンションに向かった。
すると、マンションの前に消防車が数台停まっていた。
何だろうと思っていると、部下の女の子がマンションの40階を指差した。
その部屋から煙が出ている。
 
「先輩、火事です! 先輩の部屋の下!」
 
男は青ざめ、消防員に大丈夫なのかを迫った。
 
男は祈るように見ていたが、どうやら他の部屋に燃え移る前に消し止められたらしい。
男は安堵したと同時に、やっぱりタワーマンションの部屋を売りに出そうと決めた。
 
終わり。

■解説

男の部下の女の子は、なぜ男の部屋の場所を知っているのか?
男は誰にも話していないはずである。
もしかすると、その女の子は男のストーカーで、男の妻に嫌がらせもしていたのかもしれない。

 

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