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鏡餅

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本編

年末。
AとBがこんな話をしている。

A「お前んち、鏡餅飾ってる?」
B「いや、うちはそういうの信じてないからさ」
A「でも、いつも初詣とか行ってるじゃん」
B「それはなんていうか、習慣で行ってるだけだよ。おみくじ引きたいしさ」
A「ふうん」
B「なんで、急に鏡餅の話が出てくるんだ?」
A「それがさ、俺んち、今年から飾り始めたんだよ。うちって、なんか運が悪いって言うか不運が続いたからさ。ものは試しってことで」
B「へー。それで?」
A「そしたらさ、今年は結構、運がいいって言うか運気が逆転したって感じなんだよね。うちもあんまりそういうの信じてなかったけど、飾ってみて正解だったんだ」
B「……そうなんだ」
A「お前んちも飾ってみたら? おじさん、なんか騙されたとかで借金、すげーできたんだろ? 鏡餅を飾って神様にお願いしたら、運気が逆転するかもしれないぞ」
B「鏡餅かぁ……。神様って餅が好きなのか?」
A「好物って言うかお供え物だから。鏡餅をお供えして神様と新年のお祝いをして、1年の良運を願うんだってさ」
B「詳しいんだな」
A「色々調べたからさ。鏡餅が丸いのは人の心臓を表してるんだって。あと鏡餅が二段なのは陰と陽を表してて、幸福と財産が重なっていて運気が上がるんだって」
B「そっかぁ。そう聞くとご利益ありそうだな」
A「でしょ? 飾った方がいいよ」
B「けどなあ。金がねーし。今からじゃ売り切れてて買えなさそうなんだよなぁ」
A「そっか。残念だな。来年飾ればいいんじゃないか?」
B「あ、そうだ。お前さ、これから家に来ないか? 弟連れてさ」
A「え? 別にいいけど」
B「じゃあ、俺、先に帰って用意してくるわ。お前は弟連れてきて」
A「わかった。じゃあな」
B「ああ」
 
この後、Aは弟を連れてBの家に行った。
そして、Bの家では神様へのお供え物が間に合ったのだった。
 
終わり。

■解説

Bは餅が心臓の代わりだと勘違いしていた。
そのことから、心臓が餅の代わりになると考えた。
つまり、Aとその弟の心臓は鏡餅の代わりとして神様へのお供え物にされてしまった。

 

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