本編
卒業旅行として、今日は友達と遊園地のテーマパークに来た。
全員7人という、なかなかの大人数だ。
高校最後の旅行。
つまりは、好きな人に告白する最後のチャンスだ。
ということで、男4人と女の子3人という状況で遊びに来た。
なんで、女の子が1人足りないかというと、1人はどうしても都合が付かなかったからだ。
こればっかりは仕方ない。
もちろん、ホテルの宿は男女別だ。
昨日は男たちで色々と作戦を練った。
好きな人が来ないという状況のSは、最初は文句を言っていたが、割り切ってみんなの手伝いをしてくれると約束してくれた。
なぜ、旅行で遊園地を選んだかというのはもちろん、理由がある。
それはつり橋効果を狙ったためだ。
だから、今日はできるだけジェットコースター系を中心に、お化け屋敷なんかも回る予定になっている。
女の子たちもジェットコースター系が好きだと言うことで、ホッと一安心だ。
さっそく、この遊園地で一番凄いと言われているジェットコースターの列に並ぶ。
一時間ほど並んだ後、ようやく俺たちの番になった。
俺はNちゃんに「一緒に乗ろうよ」と誘ったが、友達のUさんと乗ると言われてしまった。
いきなりの計画破綻。
俺たち男どもは顔を見合わせるが、まだ今日は始まったばかり。
これからなんとか軌道修正しようということになり、各々がジェットコースターに乗り込む。
せめて、隣は女の子がいいなーと思っていたが、隣は誰もいない。
俺たちは7人なので、あぶれるのはしょうがないことだ。
そして、いざ、ジェットコースターが動き出す。
結果だけをみると、正直、Nちゃんが隣でなくてよかった。
一番凄いと言われるだけのことはある。
それはもう、本当にヤバいくらい怖かった。
つり橋効果なんて生易しいものじゃない。
俺は情けないことに、悲鳴のような声を上げていた。
涙も浮かんでいた。
途中で「無理無理無理! もう降ろして」なんてことも言ってしまった。
これでは好かれるどころか、逆に嫌われてしまうところだ。
なんとか、ジェットコースターが終わり、ヨロヨロと降りる。
すると、係の人から写真を渡された。
どうやら、乗っているときの写真を自動的に撮ってくれるサービスらしい。
まったく余計なことを。
みんなは、その写真を見て、ワイワイと騒いでいる。
俺は、どうせ情けない顔をしてるだろうと思い、ポケットに写真を入れようとした。
だが、Sが「お前の写真も見せてくれよ」と言ってきたので、仕方なく見えた。
すると、写真を見たSが「いいなー、お前」と言ってくる。
「なんで?」と聞いてみたら、「隣の人に抱き着かれてるじゃん」と言って、写真を見せてくる。
「美味しい思いをしたのは、お前だけかよ」と、他の友達も口を取らがせて言ってくる。
確かに、隣の女の人が俺に抱き着いている。
しかも、結構、美人だ。
けど、全然覚えてない。
うーん。勿体ないことをしたなぁ。
終わり。
■解説
語り部の隣には誰も乗っていなかったはずである。
では、写真に写っている女の人は一体だれなのだろうか?
もしかすると、それは幽霊だったのかもしれない。