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■本編
ある会社で会議が行われている。
金子「では、動いていた新規プロジェクトはクローズということでいいでしょうか」
宮下「しょうがないでしょう。プロジェクトリーダーがあんなことになっちゃ」
田代「誰かに引き継いでやってもらうとかはどうなの? 結構、予算かかってるんだからさ」
木村「部長からは速やかにクローズして、データも消せとの通達がありました」
田代「あー、やだやだ。臭い物には蓋をしろ的な社風」
宮下「今回の件に関しては妥当な判断だろうね。死人が出たなんて話、他に漏れたら終わりだし」
金子「まあ、彼も本望でしょう。自分の研究に文字通り命を捧げられたんですから」
田代「責任を押し付けるなよ。それをいうなら、お前らだって承認したのと、結果を出せって圧力をかけた責任があるだろ」
木村「とにかく、切り替えていきましょう。このままでは会社の存続自体が危ない状況です」
田代「会社のためなら、人が死んでもいいっていうのか?」
宮下「うちのチームから新規プロジェクトの企画書を提出させてもらったんだけど。こっちの議題に移ってもらっていい?」
田代「でたよ。無理やり話を終わらせようとする、お前の悪い癖」
金子「時間は有限ですからね。先のことを考えましょう」
田代「はいはい。わかりましたよ」
金子「では、企画書の説明をお願いします」
宮下「今回の企画の概要は……」
この後の会議では新規プロジェクトの話し合いが行われたが、結局、承認するにはいたらなかった。
その議事録は木村によってまとめられた。
参加者は金子、宮下、木村と書かれている。
終わり。
■解説
参加者の中に田代の名前が入っていない。
つまり、田代は他の3人に認識されていないと考えられる。
(3人は田代の言葉に返答をしていない)
田代は新規プロジェクトのリーダーで、実験により死に至り、幽霊となって会議に参加している可能性が高い。