■本編
最近、近所で連続殺人事件が起きている。
被害者の性別、年齢、体格、経歴を見る限り、共通性が全くないことから、無差別殺人だと考えられているようだ。
ということは、俺もいつ狙われるかわからない。
注意するにこしたことはないだろう。
とはいえ、仕事の関係で終電ギリギリに帰ってくることも少なくない。
その時間になると、事件の影響もあり、外を歩いている人は全くいない。
こんな状況で一人で歩いていれば、格好の標的だと言えるだろう。
だけど、幸いなことに、俺はこうして狙われることなく普通に生活できている。
本当なら、こんなことを心配することもないほど治安がいい場所だったんだけど。
早く、犯人が捕まってほしい。
だが、その思いも虚しく、事件は難航しているらしい。
昨日、20代の女性が殺害されたとニュースでやっていた。
警察の見解では、例の連続殺人事件の犯人の仕業とのことだ。
いや、違うって。
しっかりしろよ。
俺はため息交じりでテレビを消した。
■解説
語り部は20代の女性がなぜ、例の殺人犯の仕業じゃないと知っているのだろうか。
つまり、この地域には犯罪者が2人いる。
連続殺人犯と語り部だ。
昨日の女性の殺害は語り部の犯行。
だから違うと言い切っているのである。