本編
男は不景気のあおりを受け、仕事を首になった。
他に職を探したがなかなか決まらない。
背に腹は代えられなくなった男は闇バイトに応募する。
男が入ることができたのは、かなり有名な詐欺グループだった。
10年以上、詐欺を行っているが、警察に尻尾をつかませないという、実に巧妙な組織になっている。
その組織のモットーはヤバくなったら尻尾を切る、というものだった。
素早く下を切り捨てることで、ここまで捕まることなく大きな組織に成り上がったのである。
男はこの組織に入れたことを幸運に思うと同時に、絶対に切られる側にならないよう、細心の注意を払いながら、命令を遂行していった。
その甲斐あってか、男は組織に優遇され始める。
受け子のような末端ではなく、その受け子に指示する立場だ。
これなら受け子が捕まっても、見捨てることで自分は捕まることはない。
男は受け子の募集もやるようになり、かなりの金額を稼ぎ出した。
多くの金を稼げば、もっと上に行けると考える男。
男は組織の中から見ればまだまだ下っ端で、直属の上の人間の素性すらわからない状態だ。
早く自分もその立場になりたい。
そう思い、男は少々危険な手を使ってでも、稼ぐことを優先した。
男が稼いだ額は、組織が1年で稼ぐ1割に届くほどの膨大な額だった。
これで上に行ける。
男はそう確信したが、組織からきた命令は、海外に逃げろというものだった。
男が稼ぎ過ぎたために警察の動きが活発になったのだという。
男は反省し、組織の言うように海外に逃亡することにした。
海外で頭を冷やし、戻ってきたときは焦らずに着実にやっていこうと心に決めた。
そして、男は海外逃亡に必要なパスポートと金を受け取るため、言われた場所へと向かった。
次の日。
長年追っていた詐欺グループの幹部を逮捕、というニュースが世間に流れたのだった。
終わり。
■解説
男が所属している組織のモットーは、ヤバくなったら尻尾を切るというものである。
男が稼ぎ過ぎたせいで、警察が本格的に動き始め、組織はヤバいと考えた。
なので、囮として男を尻尾として切ったのである。
男は自分の上の人間さえ知らないと言っているのに、詐欺グループの幹部と報道されるのはどう考えてもおかしい。
男が組織に言われてパスポートや金を受け取る場所には警察が張り込んでいるうえ、男が組織の幹部だという偽の情報を渡されていると考えられる。