本編
少年は足が遅かった。
それがずっとコンプレックスで、体育や運動会などは憂鬱で仕方がなかった。
しかし、そんなある年の運動会。
出場する種目決めで、なんと少年はリレーのアンカーにされてしまった。
嫌だと抵抗するが、周りの人や教師から頑張ってみろと励まされ、渋々受けることになる。
周りは走ることにコンプレックスを持っている少年に、諦めるのではなく頑張ってほしいという思いを持っていたからであった。
少年は周りの期待に応えようと、必死に練習を重ねる。
そして、運動会当日。
少年のクラスは好調で、学年優勝が目前となった。
その状況に、周りの人は手のひらを返し、少年にプレッシャーをかける。
最後のリレーで5位以内に入れば優勝が決まる。
絶対に5位以内に入れ、とクラス全員から言われ、緊張で足が震える少年。
ついにリレーがスタートなる。
少年のクラスはスタートも好調で、ぶっちぎりの1位を走っていく。
そして、少年へバトンが渡される。
少年は必死に走った。
今までにないくらいに。
その結果、少年は誰にも抜かれることなく、順位を維持してゴールした。
少年はクラス中から失望され、余計に走ることが嫌いになった。
終わり。
■解説
少年のクラスは、スタートは1位だったが、少年に渡るときには順位を落としてしまっている。
つまり、少年は最後の順位の時にバトンが渡ったことになる。
後ろには誰もいない状態なので、誰にも抜かれることはない。
だが、逆に言うと誰も抜くことはできず、ドベのままゴールしたため、周りから失望されてしまったというわけである。
また、少年の前に走った選手が抜かれているのに、すべての責任を少年に押し付けているというところも、このクラスの闇が窺える。