本編
俺の親父は国会議員をやっている。
議員としてはベテランで、地元の企業ともガッツリとつながってるらしくて、政治基盤は盤石だといつも言っていた。
しかも、警視長とも知り合いみたいで、何かあったらもみ消してもらっている。
もちろん、俺もよくその人のお世話になってる。
まあ、この町じゃ、俺はやりたい放題といってもいい。
どこでも顔パスだし、盗みやむかつくやつを殴っても捕まらない。
逆に、俺に関わった方が親父から結構な額をもらえるから嬉しいんじゃないかな。
この街じゃ俺が一番偉い。
みんな俺を避けて通るし、誰でも俺にヘコヘコする。
ホント、俺は勝ち組だよ。
親父の息子でホントよかった。
今日は暑いからアイスを食おうと思って店に寄ったら、変な奴が横入りするなと注意してきたから、ぶん殴ってやった。
アイスも食えてストレス発散もできた。
最高だね。
そしたらさ、次の日、俺は逮捕されて、それがニュースにもなったみたいだ。
俺は今、留置所にいる。
ったく。
親父は何やってんだよ。
早くここから出すように、言えっての!
あーあ、サイアク。
終わり。
■解説
語り部の言うように小さい事件なら、もみ消すことができる。
しかし、今回、語り部は逮捕され、ニュースにもなっている。
つまり、警視長が握り潰せない上にニュースにもなる人物を殴ったことになる。
下手をすると国際問題になりかねないほどの人物に対して傷害事件を起こしたのかもしれない。
この後、語り部の父親は国会議員としての地位を追われ、語り部も無残な人生を歩むはめになる。