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掃除当番

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本編

俺は野球の名門高校に通っている。
学校は全寮制で、野球部は全員、寮に住む決まりになっているのだ。
 
この高校に推薦で入れるとなったときは、本当に嬉しかった。
甲子園に行くことが小さい頃からの夢だったからだ。
 
だけど、俺の野球の才能はどうやら中学までがピークだったらしい。
高校に行ってからは伸び悩み、レギュラー争いどころかろくに練習に参加もさせてもらえなくなった。
球拾いのような雑用をさせられてばかりだ。
 
当然、こんな俺はイジメの対象になった。
部活では球拾い、グランド整備、部員のユニフォームの洗濯などをやらされる。
マネージャーと一緒に作業をやることも少なくない。
 
マネージャーが女の子ならある意味美味しいが、この学校は男子校だ。
本当に嫌になる。
 
寮に帰ってもイジメは続く。
俺は寮の掃除当番になっているのだ。
 
寮内のありとあらゆる場所の掃除をしなくてはならない。
玄関や廊下、トイレ、風呂、洗面所などなど。
部員の部屋意外の掃除を全部任されてる……というより押し付けられている。
 
それだけでも十分イジメだと思うのに、最近ではさらに陰湿なイジメをされている。
わざと玄関に泥だらけの靴で上がってきたり、廊下で砂を払ったり、風呂の排水溝を長い髪で詰まらせたり、トイレのタンクに赤のペンキを入れたり、洗面所の鏡に手形をベタベタつけたり。
もう、ホント、ガキくさい悪戯ばかりだ。
 
でも、そんな馬鹿臭いことでも、俺の精神は削られていく。
夜は眠れなくなり、寝不足になる。
そのせいで、幻聴まで聞こえるようになった。
 
もう限界だ。
こんなところにいてもいいことなんて一つもない。
 
俺は転校することを決めた。
 
終わり。

■解説

野球の名門校ということは部員はほぼ坊主のはずである。
それなのに排水溝が『長い髪』で詰まるのはおかしい。
そのほかにも、トイレのタンクに赤いペンキが入れられているというが、本当にペンキなのだろうか。
鏡の手形も怪しい。
なにより、語り部が、幻聴が聞こえるようになったと言っている。
果たして、本当に幻聴なのだろうか。
もしかするとこの寮には人ではない者が住み着いているのかもしれない。
語り部は転校することで、ある意味助かったが、残された部員がどうなってしまうのだろうか。

 

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