本編
男はTV局のプロデューサーをしている。
コネでTV局に入り、そのコネのおかげで昇進し、異例の速さでプロデューサーに上り詰めた。
男は下積みもなくプロデューサーになったため、番組制作に関してはほぼ何も知らない状態だった。
だからいつも番組制作は下の人間に全て任せている。
口を出さないことがある意味、功を奏したのか男が手掛けた番組の視聴率はなかなか高かった。
いつしか、周りからはコネでのし上がったプロデューサーではなく、敏腕プロデューサーとして認識され始める。
これに気をよくしてか、男は番組制作の現場に現れ、指示しるようになった。
もちろん、その指示は無茶苦茶で、現場は疲弊し続けている。
そんなあるとき、局長から社運を賭けた番組の案件が渡された。
それは歌番組で、どんなに経費がかかっても絶対に成功させてほしいというものだった。
そこまで言われれば断ることもできず、男は了承した。
だが、男はまったく歌に興味がない。
今の流行りはもちろん、過去に流行った曲もしらないのだ。
そこで男はディレクターにキャスト案を出せと命令する。
豪華なキャスティングにして欲しいと。
ディレクターは三日三晩考え抜き、男にキャスティング表を出した。
男はそのキャスティングに目を通す。
男でも知っている実に豪華なメンバーだった。
男はさっそくそのキャストを集めた。
多額の出演料がかかるが、金は度外視してもいいとのお達しだ。
そして、放送日。
番組が放送されると、大炎上する。
各所のメディアからも叩かれ、「史上最悪の歌番組」と呼ばれる始末。
男は地方に飛ばされ、男の部下たちは喜んだ。
終わり。
■解説
男は全く曲に興味もなく、アーティストも知らないはず。
なのに、なぜ『豪華』だと思ったのか。
それはキャスティングした出演者が『歌手ではなかった』ため。
歌手がいない歌番組がどうなるのか。
史上最悪の歌番組と言われても仕方がないだろう。