本編
男には妹のように思っている幼馴染がいる。
その幼馴染はオカルト好きで、いつも人形を使って降霊術をしていた。
男はいつも、幼馴染が人形を動かすのを見て驚かされていたのだった。
月日が流れ、男はある女性と結婚をした。
子供こそできなかったが、男は幸せな日々を過ごしていく。
そんな男のことを幼馴染も祝福してくれていた。
幼馴染は男の妻とも仲が良く、幼馴染が妻にこのシャンプーがいいとか、このドライヤーは髪を痛めないなど、色々と言ってくれていた。
妻の方もそんな男の幼馴染のことを妹のように思っているようだった。
しかし、その頃から世間ではある殺人事件が話題になる。
発見された遺体は必ず、一部分切り取られているというものだった。
右手、左足、右目や鼻など、実に様々な場所が切り取られている。
被害者には共通点が鳴く、男でも女でも見境なく襲われていた。
男は怖いと思いながらも、どこか他人事のように考えていたのだった。
自分や周りの人たちが犠牲になるわけがないと。
だが、その考えは裏切られることになる。
男の妻が犯人にさらわれ、遺体となって見つかった。
その遺体からは『髪』が剥ぎ取られていた。
それを見た男は心のどこかで確信じみたものを感じる。
犯人は幼馴染ではないだろうか、と。
そして、その予想は奇しくも当たってしまう。
幼馴染の家に行くと、ある『人形』を見せられる。
その人形は男にそっくりな人形だった。
幼馴染は男と似た部位を持っている人間を殺し、その似ている部分を奪っていたのだ。
奪った部分を継ぎ接ぎし、人形を作り上げたのである。
既に人形の肉体は完成していた。
肉体の最後のパーツが、妻の髪だったのだろう。
男はなぜ、こんなことをしたのかと問いかける。
すると幼馴染は男を自分のものにするためだと言った。
本物の男は他の人のものになったが、人形なら自分のものにできると思ったのだという。
絶望し、座り込む男に、幼馴染はナイフを持って歩み寄る。
そして、こう言った。
「来てくれてありがとう。これで完成するよ」
終わり。
■解説
幼馴染は降霊術が得意である。
肉体のパーツは男の妻の髪で揃っている。
最後に必要なのは、降霊する魂。
幼馴染は男を自分のものにしようとしていた。
つまり、自分で作った男の肉体に男の魂を降霊させて完成にいたるわけである。