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メイドインジャパン

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本編

ブラジルで暮らしていると、まだまだメイドインジャパンというのは憧れの的のようである。
確かに俺も電化製品はもちろん、食器とか日用品を買うときは帰国して日本で買っている。
そして、意外なところでもメイドインジャパンが人気な分野があって、驚いた記憶がある。
 
俺は貿易会社の現場担当をしている。
いわゆる輸入品のチェックをする仕事だ。
とはいえ、担当しているのはごくごくわずかな品だけだ。
倉庫の端でほそぼそと検品をする日々を送っている。
 
だが逆に言うとあまり注目されないということだ。
つまり、違法なものを通すには良い場所と言えるだろう。
だから俺は地元のギャングと繋がることで、結構なお金を得ているのだ。
 
今日も検品をしていると、品物の奥の方から死体が出てくる。
 
「死体、届いた?」
 
そう言いながら若いギャングがズカズカと倉庫内に入ってくる。
こういういかにもという見た目のやつは、あまり倉庫に入ってきてほしくないのだが。
 
「ちょうど、見つけたところ。これ」
「おー! ちゃんと届いたか。じゃあ、これ、貰ってくな」
「いつも思うんだけど、何に使うんだ?」
「見せしめ」
「なるほど。そいつは何やったんだ?」
「金の持ち逃げ。まあ、この世界じゃよくあることだよ」
 
若いギャングが死体を持ち上げようと近づく。
 
「あー、メイドインジャパンじゃん!」
 
死体は服を着た状態だった。
おそらく日本で買った服なのだろう。
腕時計なんかもしてあった。
 
「いーなー。俺もどうせだったら、メイドインジャパンがいいな」
「……やっぱり、違うのか?」
「そりゃそうだよ。技術力が違うね。綺麗なもんさ。芸術的ってやつ?」
「あー、確かに」
「ホント人気だよ。俺と同じようにどうせなら、メイドインジャパンがいいってやつは多いんだぞ」
「そんなものか? 俺にはさっぱりわからん。それよりさ」
「ん?」
「いつものやつはどうしたんだ?」
「ああ。あいつか。あいつはボスの女に手を出したのが見つかってさ。今頃バラされてるんじゃないかな」
「……なるほど」
「あいつはメイドインブラジルだな」
 
若いギャングはガハハと笑いながら、死体を持って行った。
まったく、笑えない冗談だ。
 
終わり。

■解説

若いギャングがどうせだったらメイドインジャパンが「いい」と言っていて、技術力が違う、綺麗なもんさとも言っている。
そして、ボスの女に手を出した男が殺されて「メイドインブラジル」と言っている。
また、語り部は「メイドインジャパンがいい」ことに対して「さっぱりわからない」と返している。
最初に電化製品などは日本で買っていると言っているのに、こういうのはおかしい。
つまり、送られてきた死体は「日本」からで、メイドインジャパンは「死体」のことを指している。
綺麗な状態で殺して送ってきているということになる。
若いギャングはどうせ殺されるなら、日本で殺されたいと言っているのだ。
それに対して、語り部は殺され方を考えていることが「さっぱりわからない」と返したというわけである。
 
さらに若いギャングは「メイドインジャパンが人気」と言っていることから、頻繁に日本で綺麗な死体が「作られている」可能性が高い。

 

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