本編
近隣でも有名なごみ屋敷があった。
市役所にも多数の苦情が続き、さすがに市で何とかしようと決まる。
市の予算を使うから、片付けさせて欲しいと、ごみ屋敷の持ち主であるおばあさんに伝えた。
しかし、おばあさんは断固拒否する。
なんでも、これはごみではなく、思い出の品なのだそうだ。
持ち主の許可を得られなかったため、職員は諦めるしかなかった。
だが、それでも、毎日、近隣の住人から苦情が続く。
職員はおばあさんの親戚に説得してもらおうと、戸籍を調べたが、おばあさんは天涯孤独の人間だった。
日に日に苦情の数も、温度も上がっていく。
中には直接役所に来て、苦情を言いにくる者も出てきた。
このことは市長の耳にも入り、なんとかしろと命令され、板挟みになる職員。
そこで覚悟を決めて、職員は再度おばあさんの家に行った。
そのことが上手くいき、職員はすぐに個人でやっている清掃屋に依頼してごみ屋敷の清掃を依頼した。
時間とお金はかかったが、ごみ屋敷は見違えるほど綺麗になった。
建物としてはまだまだ使える状態だったので、市はこの屋敷を格安で貸し出しを始めた。
近隣の住人は満足したのか、何も言う者はいなくなった。
終わり。
■解説
職員が再度、おばあさんの家に行った後から、おばあさんの存在が語られていない。
さらに、おばあさんの屋敷なのに、市が貸し出しするのはおかしい。
つまり、おばあさんはいなくなったことになる。
そして、そのことを近隣の住人は気づいたはずだが、誰も何も言わないというところに闇を感じる。